続きです
あの奇跡の再会から、3年の月日が流れた。
僕は相変わらず、前世の記憶を抱えたまま、この世界で普通に暮らしている。長尾の幸せを願うと決めたあの日から、胸の痛みは少しずつ、優しい思い出へと変わっていった。
ある雨の日の夕方。
仕事帰りに急な豪雨に降られた僕は、小さなカフェの軒下に駆け込んだ。濡れた肩を払っていると、すぐ隣に同じように駆け込んできた人がいた。
「うわ、めっちゃ降ってきた……」
聞き覚えのある、少し高めの声。
ハッとして隣を見ると、そこには傘を持たずに髪を濡らした長尾が立っていた。
心臓が跳ね上がる。3年前、隣に誰かを連れていた彼は、今は一人だった。左手の薬指にも、何も光っていない。
「あ、すみません。驚かせちゃいました?」
僕の視線に気づいた長尾が、人懐っこい笑顔を向けてくる。やっぱり、僕のことは覚えていない人の反応だ。
「いえ、大丈夫です。すごい雨ですね」
「ほんとですね。あ、あの……」
長尾は僕の顔をじっと見つめると、不思議そうに眉を寄せた。
「なんか、変なこと言うていいですか? 僕、あなたとどこかで会ったことあります? 初めてな気がせえへんというか……」
その言葉に、息が止まりそうになる。
記憶はなくても、魂が覚えている。そんな奇跡が、本当にあるのかもしれない。
「さあ、どうでしょう」
僕はポケットの中で、震える手をぎゅっと握りしめた。
「でも、もしよかったら、雨が止むまであそこでコーヒーでも飲みながら、確かめてみませんか?」
長尾は一瞬目を丸くしたあと、あの頃と全く同じ、世界で一番大好きな笑顔を咲かせた。
「いいですね。行きましょう!」
前世の続きじゃなくていい。ここからまた、僕たちの新しい物語を始めればいい。
カフェのドアを開ける長尾の後ろ姿を見ながら、今度は遠くからではなく、すぐ隣で、彼の幸せを願える未来を予感していた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。