第17話

何度巡っても【kyng】
165
2026/02/07 13:00 更新


不思議な夢を見ていた
ヒーローになって、沢山の人を救って
優しい仲間たちに囲まれて
暖かくてどこか懐かしいようで
すごく幸せな、そんな夢。

夢の中でヒーローになる
なんて子供みたいだと我ながら思う
でも会話の内容も行動も
すべて妙にリアリティーがあってなんだか不思議な感覚。




目が覚めたとき涙が出ていた。
なぜかわからない、
無性に寂しくなって心が空っぽになったみたいだ
気を紛らわすために外に出ることにした。
行き先も決めずバスへ乗り込んだ

隣町に来たところでバスを降り
行き先を調べるためバッグから
スマホを取り出しまた歩き始めた。

ふわっ、と風に揺れる青いなにかが視界に
映り込んだと同時に身体に強い衝撃が走った
あなた
ご、ごめんなさい、大丈夫でっ...!?
最初はぶつかってしまったのだと思った。
謝罪しようと目を開けた瞬間
自分が抱擁されている事に気がついた

あぁ、なんで忘れていたんだろう
この人は絶対忘れちゃいけないのに
覚えていなきゃいけない人なのに
大好きな人なのに
あなた
あの、えっと
kyng.
ごめん、ごめんっ...
突き放す、なんて選択肢は
最初から私にはなかった。
少しインナーが入った髪色も、落ち着いた声も
柔らかいホワイトムスクの匂いも全部全部懐かしかった。
懐かしくて、嬉しくて。
頬を温かいものが伝って人の視線なんてどうでもよかった。
あなた
ろうくん、顔上げてよ。久しぶりに顔みたいな
kyng.
俺あなたのこと守れなかった
やっと見れた、ずっと見たかった。
涙でくしゃくしゃになってしまった
顔を上げ私に告げた

守れなかった?
私の技量不足だったのに

やっぱり私の恋人は
いつまで経っても善人だ
いい人すぎるんだ
あなた
泣いてるじゃん笑
kyng.
お前もだろ
抱きしめる力がちょっと強くなった。
煽られるとすぐノっちゃうところも変わってない
前も、今もずっと
あなた
ねぇロウくん泣かないでってば、うつっちゃうじゃん
kyng.
お前にずっと会いたかったんだから我慢しろ
我慢なんて出来るわけがない
会いたかったのなんて
こっちも一緒なのに

あなた
ロウくん、
kyng.
なんだよ
あなた
ごめんっ、先にしんじゃって。ごめんね
kyng.
ほんと、バカ
あなた
ばっ!?悪口やめて?
kyng.
バカ、先に死ぬなよ
君の言う通り。
私ってほんとバカ

一段落したら籍入れようね、
旅行も行きたいよね
とかたくさん話し合ってたのに、
普段外に出ないロウくんも
すごく楽しみにしてくれていたのに
幸せで、大好きな時間だったのに
なんで忘れちゃうの
kyng.
...俺さ、ちゃんとヒーローになれてた?
あなた
...ロウはさ、暗殺者で、暴言だって言うし
子どもたちが描くヒーロー像とは違うと思う
あなた
でもね、
私のことを受け入れてくれて
不器用なりに頑張って気持ちを伝えようとしてくれて
根は優しくて、みんなから慕われてて
いじられキャラで
大事なときいつもそばにいてくれるところも
あなた
私の中ではずっとヒーローだったよ

今みたいに心の底から満たされたような
そんな顔で笑いかけてくれるところも
kyng.
なら、お前も俺のヒーローだな

君のことなら全部愛おしく思えちゃうんだ

プリ小説オーディオドラマ