数時間後 ── 太陽が沈み ,
光を失った偽りの月が空を飾る頃 。
余とホークスはチェスをしていた 。
この駒は進む 。
この駒は守る 。
そして , この駒は ── 捨てる 。
神々が人の運命を構築するように …
余もまた , 盤上の未来を選んでいるにすぎない 。
チェスの最後 , 余は
ホークス側のキングを小突いてから立ち上がった 。
月に1番近い部屋 。
人工的な電気を消せば ,
街下の明かりだけが2人を灯した 。
そんな部屋の一角で始まる " 星還 " 。
余の声に , 余の姿に , 余の纏いに 。
わずかとなった月の力が呼応する 。
天高く昇る欠けた水星は ,
金から銀へ , 銀から蒼へ , 蒼から紅へ 。
そして 原初の
" 名を持たぬ色 " へと変わっていく 。
その時 , 一筋の流星が走った 。
否 , 還った 。
夜空の奥 ,
この世界の明かりの届かない宇宙の先 。
神々が星を生み落とした " 始まりの地 " へ 。
水星は , 宇宙へ還った 。
チェス盤に再び駒が並ぶ 。
進む駒と待つ駒 。
還った水星と , 未だ還らぬ光 。
悔しそうな顔をしながら
無言で余を見つめるホークスが
子どものようで , 気づけば笑みが溢れた 。
その時 夜空で
" 海王星 ポセイドン " が , 静かに沈黙していた 。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!