夏油くんは私のゆったりとした、というかぶりっ子口調が嫌みたいで、遮るように話した。
またもや私の言葉を遮るように__今度は夏油くんではないが、地響きが聞こえた。
ここで冷静さを失ってはダメ。強い感情により呪力を乱し、実力を発揮できず、死に至る術師は多い。
呪霊だ。形は…動物のようだ。四足歩行。
…人の言葉にも聞こえる。「あそぼ?」かな。
右手を銃の形にし、左手を右手の下に置く。
銃を撃つようにして、そのまま流れるように指を鳴らす。
呪霊の足元が凍りつく。
突然動けなくなったことに驚き叫ぶ呪霊。
と、思いきや。
呪霊は氷を砕き、胸を張るようにして唸る。
砕かれた氷の破片が私に刺さりそうになる。
手持ちの呪霊を私と氷の間に滑り込ませるようにして助けてくれる。氷は私が作った水ををもとにしているから私の呪力が含まれている。そのため夏油くんの呪霊は少し傷ついた。
体にかかったままの少量の水を振り払うようにしながら、呪霊はこちら、いや、私に向かって走ってくる。結構速いな、おい。
夏油くんは手持ちの呪霊を使い攻撃を防ぐ。しかし、敵の呪霊は思っていたより強くて……
二人の声が揃った。
目をさまよわせて、うなずいたあと、私はその場から離れ、五条くんを呼びに
行かなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!