【りいぬSide】
今日はるぅとくんと2人で遊園地に行く日。
最近出掛けてないなぁと思っていたところに、
るぅとくんがお出かけに誘ってくれた。
もちろん活動も楽しくて生きがいなのだが、
こうやって完全オフで遊ぶのは久しぶりだから
すごく待ち遠しくしていたのだ。
頬を緩めたまま、俺は集合場所に向かった。
約束していた集合場所に到着し、時間を確認する。
予定していた時間ちょうどに到着して
得意げに待つこと数分、
聞き慣れた声が聞こえて振り向くと、
小走りでこちらに向かってくる人が見えた。
相変わらずスタイルがよろしいこと。
普段の声質からは想像できない格好よさに、
初対面の頃はすごく驚いたもんだ。
るぅとくんとの会話に心を弾ませながら、
遊園地に向かった。
わいわい…がやがや…
【るぅとSide】
早めに着いたつもりだったが、
想像以上の混みようにちょっと引いてしまう。
やっぱ休日だと混むよなぁ…。
意気揚々と足を進めるりいぬを追いかけて、
園内へと入った。
嬉しいことに、僕たちはふたりとも絶叫系が平気だから、
お互い特に気を遣わずに楽しめそうだ。
今日はめいっぱい遊ぶぞ…!
【るぅとSide】
楽しくて次から次へと乗っていたら、
いつの間にか午前中が終わっていた。
ちなみにお互い体力はまだ有り余っている状態。
見ると、よくある落下する瞬間の写真が
モニターに映し出されていた。
満面の笑みで手を振るりいぬ。
トイレに行くだけで楽しそうだなぁ。
りいぬに軽く手を振りながらスマホで飲食店を調べる。
せっかくだしちょっと高級感のあるものでも…
ふと、トイレの近くにいる男性2人に目がいく。
一度目に入ってしまったらもう気になってしまって、
思わずその男性らに近づく。
“アイツ”とは誰のことだろう。
誰のことであろうと、あまりいい奴らではなさそうだ。
赤髪なんてここ最近で一人しか見ていない。
話の内容的にもナンパとか
そういう可愛い行いではなさそうだった。
となると、やることは一つ。
【りいぬSide】
あっという間に午前中が終わり、
そろそろお昼ごはん時になるころだ。
公衆のトイレはあまり清潔でもなさそうだし、
さっきみたいな人混みにもなりやすいから
あまり好かない。
トイレから出て、ふと見覚えのある姿が目に入る。
そこにいたのは確かにるぅとくんだった。
見た感じ2人の男性と話しているようだ。
話している内容が気になるが、
友人との会話ならあまり盗み聞きは良くないと思って
先に待っていようとしたら、
るぅとくんと目があった。
2人に軽い挨拶のようなものをしてから、
こちらに笑顔で向かってくる。
唐突に俺の安否を聞いてくるるぅとくんに疑問を抱く。
てか、俺に気づいてからすぐに向かってきてくれたけど、
友達は大丈夫だったのかな…?
友達じゃないとすれば誰だろう。
スタッフさんにあんな人はいなかったし
そもそもこんな遊園地で出くわすなんてありえない。
少しの間考える。
すると、ピコンッと頭の中で1つの答えが浮かんだ。
同性からも好かれるとか人気者過ぎない?
あれでもよく見たらさっきの人達なんか怯えてる…?
何話してたんだろ…めっちゃ気になる…。
るぅとくんに背中を押されながらその場を離れた。
【るぅとSide】
りいぬに勘付かれたと思って焦りが生じたが、
いい感じに勘違いしてくれて助かった。
逆ナンはちょっと違い過ぎるけど。
そもそも先に話しかけたのは僕だし。
ぱぁっと笑顔になるりいぬを見て思わず頬が緩む。
やっぱりりいぬは笑顔が一番だ。
きゃっきゃと幸せそうに話すりいぬ。
そう、それでいい。
君はそうやって、僕の横で笑っているだけでいい。
そうしてさえくれれば、あとは僕が守ってあげる。
よくメンバーからも“りいぬのセコム”なんて言われるけど、
そんな優しいものじゃない。
りいぬを守るためだったらなんだってする。
たとえそれが、過ぎた行いでもね。
先程の男性らを横目に、僕たちは飲食店に向かった。
きっとあの人たちは、一生僕らに近づけない。
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!