山間の古道は、夜の帳が下りてからは一層の静寂に包まれていた。
木々はざわめきすらなく、ただ時折、風が草を撫でる音が聞こえるだけだ。
長尾景は、一晩中、この人気のない道を進んでいた。
任務は、この先に潜む、夜陰に紛れて村を襲う怪異を討伐すること。
他の二人とは別行動を取り、一人で山を登る。
「…ふぅ、それにしても、長いな…」
山鳥の長く垂れ下がった尾羽のように、いつまでも続くかと思えるような道。
長尾は、柄に手をかけ、暗闇の中に目を凝らす。先程から、妙に視線を感じる。
気配は一つではない。
「出てこいよ、コソコソしてないでさ。一人だってわかってんだろ?」
長尾がそう言うと、不気味な気配がいくつも重なり、木の陰からぞろぞろと禍々しいモノたちが姿を現した。
その数は、討伐依頼にあった数よりも遥かに多い。
「はは、手ごわそうじゃん! 面白くなってきた!」
長尾は不敵な笑みを浮かべると、一気に間合いを詰めた。
剣を振るうたびに、青白い光が闇を切り裂く。
彼の剣技は、まるで舞を踊っているかのようだ。
しかし、相手の数が多すぎる。
「ちっ…キリがねえな…」
長尾は一旦距離を取り、背後の古木に背を預けた。
息を切らしながらも、目はまだ獲物を捉えている。疲労は隠せないが、集中力は研ぎ澄まされていた。
その時、懐から小さな札が落ちた。
それは、弦月藤士郎が任務の前に渡してくれた護符だった。
「…トウジロウ…」
弦月は、いつも彼らの無事を祈ってくれる。
時折、その心配が過保護に感じられることもあるが、今、一人で戦っている長尾にとっては、何よりも心強い。
「…ハルも、今頃何か研究してるかな…」
甲斐田晴のことも思い出す。
研究に没頭し、周りのことなどお構いなしに見える彼だが、いざという時の冷静な判断力と、圧倒的な知識は、長尾にとって頼もしい存在だった。
「…俺、一人じゃないんだよな…」
孤独な夜道での戦いは、精神的にも肉体的にも過酷だ。だが、長尾は一人ではない。
都に帰れば、彼を待っている仲間がいる。
「よし…!」
長尾は、再び剣を構える。
両手の刀を強く握りしめ、禍々しいモノたちに斬りかかった。
仲間たちの顔を思い浮かべながら、その刃に力を込める。夜はまだ長く、戦いは終わらない。
だが、その夜の向こうに、必ず仲間たちがいる。
そう信じて、長尾は一人、長く続く夜道を駆け抜けていくのだった。







![[🌈🕒]嫌われライバーになったのでそのまま悪役を演じ切ります](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/cwk7wsuSAyg61rKeAN9kUbDUEYY2/cover/01KK5BM1HDXZ53QRWDQN18B7X1_resized_240x340.jpg)




編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!