第12話

暗闇
35
2024/04/24 11:40
単独の任務。しっかりと成果を上げなければ...
───ここに私の居場所はなくなってしまう。
(なまえ)
あなた
ここが今回の…
今回の任務で訪れた場所は、薄暗く少し湿った香りがする。昔の孤児院を思い出して、また…不安が募る。
???
???
あっらら〜
???
???
きみ、もしかしてカード回収に来た子?
(なまえ)
あなた
大人しくカードを渡してください
???
???
ん〜きみ、実は体調悪かったりするでしょ
相手にさえ、体調不良を指摘される程今の自分は見るに堪えない姿なのだろう。
???
???
渡してあげてもいいけど、きみのその可愛い顔が苦痛に歪む姿を見せてくれたらね♡
今回の任務は、カード所持の疑いがある人物に接触すること、所持が確認できたら速やかに回収することだ。
だが現状プレイヤーの能力が、詳細に分かっていない以上下手に手出しをする訳にはいかない。
???
???
プレイ
(なまえ)
あなた
(!?)
相手に呼応するように、私もカードを手にした。
が、一瞬目の前が白くひかり視界を奪った。
目を開くと私は目前の光景に立ち尽くしてしまった。
(なまえ)
あなた
え…
ミオ
ミオ
どうしたの?あなたの下の名前
懐かしい、まだみんなの笑みが溢れる孤児院の一室。
どうして、なんでこんなところにミオが…それに、孤児院まで…
これは有り得るはずのない、幻想だ。
頭では、そう分かっているのに───
(なまえ)
あなた
な、なんでミオがここに?
ミオ
ミオ
もぉ〜
質問に質問で返さないでよね
ミオ
ミオ
みんなあなたの下の名前の帰りを待ってたんだよ
(なまえ)
あなた
私の帰りを?
子供達
子供達
あ!おかえり!!あなたの下の名前
子供達
子供達
ねぇ見て!
今日たくさんお絵描きしたの!!
目の前に広がる、私の大切な記憶。
それは幻想であると分かっていても、ずっとこのまま夢を見ていたいと思う程、儚く美しいものだった。
(なまえ)
あなた
(このままじゃだめだ!幻想を解かないと)
カードを手に取った私を見て、皆の顔が引きつった
(なまえ)
あなた
プレイ
ミオ
ミオ
な、何?そのカード
子供達
子供達
あなたの下の名前…?
(なまえ)
あなた
これは現実なんかじゃない。
悲しいけど、あなた達は私の幻想でしかないんだ。
ミオ
ミオ
その一瞬でミオの雰囲気が変わった。
???
???
あらら、気づいちゃった?
彼女を殺せば、きみは元の世界に戻れるの。
だけど、あなたに彼女が殺せるかしら?
そう言い残し、また姿を消した。
(なまえ)
あなた
( プレイヤーが私の記憶を元に、再現している仮想空間に過ぎない。手にかけることなんて、簡単なはず…)
ミオ
ミオ
ねぇあなたの下の名前
ミオ
ミオ
私ずっと寂しかったんだよ。
あなたの下の名前は、ずっと働いてばっかりで家にはあまり帰ってこないし、帰ってきてもすぐ出かけちゃうし
ミオ
ミオ
私は今、久々にあなたの下の名前とお話出来て幸せなんだ
そう笑うミオは、いつも通りの優しいミオだった。
(なまえ)
あなた
ミオのいうことは事実だ。
皆の為にと、お金を稼ぐためにピノクルに入るまでは汚れ仕事も引き受けていた。そのため帰ることも減っていた。
きっと寂しい思いをしていたのは本当の事だろう。
(なまえ)
あなた
ごめんね。ミオ
私の目的はカードの回収。
それに、私の大事な思い出をこんなやつに良いようにされる訳にはいかない。
ミオはミオしかいない。プレイヤーの演じるミオは私の知っている、私の大好きなミオではない!
とっさに、スーツのポケットから小さな輸血パックを使い、刀を模倣した。
ミオ
ミオ
…え?
その一瞬、私はミオの心臓を貫いた。
ミオ
ミオ
あなたの下の名前なんて、嫌いだ…
(なまえ)
あなた
ミオの目から大粒の涙が溢れたが、それは一瞬でちりとなって消えた。
???
???
…つまんないの
(なまえ)
あなた
私はあなたを許しませんよ
偽物のミオを演じ、私の記憶を利用した。
その罪は重い。
迷うことなく、プレイヤーの首に刀の棟で頚の後ろを素早く叩く。手刀と同じ原理だ。
(なまえ)
あなた
カードいただいていきますね
無事カードは回収できた。
あとは、ハイカードに連絡をして、迎えを待つのみ。

今回の任務は成功した。
しっかり成果を上げることが出来た。私の居場所はまだ存在している。この事実に安堵し緊張の糸が緩んだ。

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