前の話
一覧へ
次の話

第9話

9
332
2024/02/21 02:27
『(あ…終わったな)』
私は諦めて罪を認めようと思い振り返った
『あ〜…え…』
そこには鶴見さんがいた

『(寄りにもよってこのひとね…)』
「………」
鶴見さんは真っ黒な目で私と死体を交互に見ている
流石軍人さんだ死体に驚きもし無い
「…あなたちゃん」
『そうです、私がやりました』
「なぜ…そこのお嬢さんを?」
多分、彼は死体と私が喧嘩でもしたと思ってるんだろうな
『時重の、記憶にコイツが残らないため』
だって死ねば次第に時重の記憶から薄れていくから
「説明してくれるかい?」
息を吸って心を落ち着かせた
じゃないと冷静に説明出来ないから
『コイツが時重の事好きだったのは気に食わないけど…まぁ許しますよ』

『いつも、私にどうでもいい話しを聞かせて…時重との時間を無くしたのも許してあげます…でも』
『でも!最後の最後で!コイツが気持ちを伝えて!時重の記憶に残ろうとする、図々しさが!許せなかった!』
「なるほど…分かった」
少しの沈黙の後鶴見さんは真っ黒な目を私に向けてこう言った

「私がどうにかしよう、あなたちゃんは言う通りに動いてくればいい」
この事態がきっかけで彼の劇場へと、私を引きずり込んでしまった
私は重い足取りで家に帰った
帰ると言っても、私には身寄りがない
いつもは智春の家に泊めてもらっている
でも今日はどうしても
足が自然と時重の家に向いていた
ガラッ
『…時重』
「…あなたどうした?」
今日だけ泊まらせてくれと無理言って泊まらせてもらった
「どこか、悪いとこでもあるんか?」

珍しく心配してくれる

『別に…なんとなく来ただけ』
真実を言ってしまえば楽だ…でも怖かった嫌われてしまったら?そう思うと正直に話す勇気など、私には無い
「そう…エカッタ…」

と言って時重は寝た
初めて時重に隠し事をしてしまったと云う事実が
人を殺した事よりも重い罪を犯した気分にした
続く

プリ小説オーディオドラマ