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第8話

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2026/03/05 01:22 更新







昼下がり。

兄たちは少し離れたところで見守っている。

リビングの真ん中。


めるとは床に座ったまま。

みかさも、すぐ前。


同じ高さ。

でも、まだ少し距離がある。


mk
……める


もう一度、呼ぶ。

声が、震えてる。

めるとはゆっくり答える。


ml
なに



やわらかい声。

勝たない声。

張り合わない声。 


みかさの手が、ぎゅっと膝を握る。


小さな体なのに、呼吸が速い。


言わなきゃ。

言わないと、ずっとこのまま。


mk
……きぁいきらい、じゃない


先に否定。
めるとの喉がかすかに鳴る。


ml
うん
mk
ぇもでも


その“でも”で、空気が止まる。


みかさの目に、涙が溜まる。



ぽろ。

一粒、落ちる。


mk
……となり、こぁいこわい


小さな声。



でも、家じゅうに響いた気がした。



兄たちが息を呑む。



めるとは動かない。


mk
める、なんぇもできぅなんでもできる。おれ、なんもない


首をぶんぶん振る。


「ゲームあるよ」と言いかけたらいとを、ろぜが止める。


今は、言わせる時間。


みかさは続ける。


mk
ならぶと、ちがうってわかる。みんな、めるのほう、みるの


だから、戻りたかった。



比べられない場所に。



守られる側に。



競争から外れた位置に。



涙が止まらない。


mk
める、すき。でも、となり、こぁいこわい



それが全部。 





めるとは、しばらく何も言わない。


胸の奥で、何かが崩れる音がする。


完璧でいれば守れると思ってた。


でも。


俺が完璧でいることが、
みかさを遠ざけてた?



ゆっくり、手を伸ばす。



みかさは一瞬びくっとする。



でも、逃げない。



めるとは、そっと。



床に手を置く。



触れない。



距離を詰めない。



ml
……おれも



ml
隣、こわかった




兄たちが目を見開く



ml
みかさが離れるの、こわかった。だから、勝ってた



守るためじゃない。


選ばれるため。


その告白は、はじめて。


みかさの涙が止まる。 



二人のあいだの距離。



まだゼロじゃない。



でも。



“こわい”を言えた分だけ、
空気がやわらかくなる。



みかさが、そっと。



小さな手を前に出す。



触れるか、触れないか。



その一センチが、
いま、世界でいちばん遠い。




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