昼下がり。
兄たちは少し離れたところで見守っている。
リビングの真ん中。
めるとは床に座ったまま。
みかさも、すぐ前。
同じ高さ。
でも、まだ少し距離がある。
もう一度、呼ぶ。
声が、震えてる。
めるとはゆっくり答える。
やわらかい声。
勝たない声。
張り合わない声。
みかさの手が、ぎゅっと膝を握る。
小さな体なのに、呼吸が速い。
言わなきゃ。
言わないと、ずっとこのまま。
先に否定。
めるとの喉がかすかに鳴る。
その“でも”で、空気が止まる。
みかさの目に、涙が溜まる。
ぽろ。
一粒、落ちる。
小さな声。
でも、家じゅうに響いた気がした。
兄たちが息を呑む。
めるとは動かない。
首をぶんぶん振る。
「ゲームあるよ」と言いかけたらいとを、ろぜが止める。
今は、言わせる時間。
みかさは続ける。
だから、戻りたかった。
比べられない場所に。
守られる側に。
競争から外れた位置に。
涙が止まらない。
それが全部。
めるとは、しばらく何も言わない。
胸の奥で、何かが崩れる音がする。
完璧でいれば守れると思ってた。
でも。
俺が完璧でいることが、
みかさを遠ざけてた?
ゆっくり、手を伸ばす。
みかさは一瞬びくっとする。
でも、逃げない。
めるとは、そっと。
床に手を置く。
触れない。
距離を詰めない。
兄たちが目を見開く
守るためじゃない。
選ばれるため。
その告白は、はじめて。
みかさの涙が止まる。
二人のあいだの距離。
まだゼロじゃない。
でも。
“こわい”を言えた分だけ、
空気がやわらかくなる。
みかさが、そっと。
小さな手を前に出す。
触れるか、触れないか。
その一センチが、
いま、世界でいちばん遠い。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。