最初に吐いたのは、蕾だった。
小さな白い椿の蕾。
まるで言いかけた言葉のように
口の奥で引っかかって
咳とともに喉からこぼれ落ちた。
冷たく、柔く、まだ咲いていない。
私の中でまだ言葉になっていないこの想いが、
形を持ってしまった瞬間だった。
まだ日が昇っていない時間、
洗面所のシンクにそっと手を伸ばす。
柔らかな蕾が、私の指の上でゆっくりと震えていた。
まるで“まだここにいさせてくれ”と訴えるように______
朝の光が差し込む教室の窓際。
いつもと変わらないはずの光景だった。
私は静かにノートを開いて視線を落とす。
けれど、喉の奥が焼けるように熱くて、
ひりついた息がこぼれそうになった。
ぐっと歯を食いしばり、咳を飲み込む。
声にならない痛みが胸の奥を焼くようだった。
その時、教室のドアが勢いよく開いた。
元気いっぱいの声が聞こえた。
この声の主は振り向かなくてもわかる。
彼奴_____寺刃ジンペイだ。
後ろから続いたのは、小間サン太夫と玉田マタロウだった。
朝から代わらない3人のテンポに、
私の教室も明るくなる。
小間が笑えてそう言うと寺刃が明るく答える。
私は彼らに目を向けず、ただ静かに返す。
それでも彼奴の声はやけに耳に残った。
まっすぐで私の中の何かを乱してくる。
すると、学園長の娘の大王路エマがやってきた。
大王路さんと寺刃は楽しそうに話し始めた。
その時また喉の奥が焼けるような痛みがはしった。
FST(フリースタイルタイム)になり
今日はYSPクラブの活動はない為、
生徒会の仕事を進めていた。
すると、また元気いっぱいの聞きなれた声が聞こえた。
私はそう言ったものの今朝は何も食べれなかった。
あの白い椿をまた吐いたからだ。
喉が痛くて何も飲み込めなかった。
そう言いながら
寺刃は生徒会にある椅子に勝手に腰かけた。
その笑顔が、たまらなく眩しい。
そして私の中の“想い”を呼び起こしてしまう。
なんとかその日は耐え、
部屋のベッドに寝転んでいた。
そう思いながらも心のどこかでは________
〈次回へ続く〉












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。