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第1話

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2022/04/30 14:34



『別れましょう』



と、突然言われた別れの言葉。

3年も付き合った彼女にとうとう振られてしまいました。


まぁそれはそうでしょうねー。
だって僕、売れない小説家なんです。

いや、間違えました。
小説家を夢見るただのニートです。


名前は柿田樹と申します。
高校生の時、演劇部に所属したことをきっかけに、脚本を書きました。

その脚本が、おもしろかったみたいで、周りから大好評でした。

そんな褒め言葉が嬉しく、僕には才能があるのでは?と勘違いをしてしまったのです。


それからは僕は、小説家を目指し、多くの小説を書いてきました。

ですが、どれもコンクールで賞をもらうこともなく、小説家なんて、夢のまた夢でした。

諦めようと思った時、タイミングよく、2時審査や、3時審査まで合格してしまうのです。


お陰で僕は、小説家になれるのもすぐなのでは?と、また勘違いをしてしまうのでした。


こんな生活を続けて最早5年。


同級生たちは、大学に入って、青春ライフを過ごしていたり、社会人になっていたり、幸せな家庭を築いていたりと、
順風満帆な日々を過ごしています。

一方僕はただのニートです。

仕事なんかしておりません。親の脛をかじって生きている、クズな男です。
ですが、そんな僕にも彼女はいました。

彼女は僕の小説を見て、面白いと褒めてくれ、支えてくれました。
彼女はすごく綺麗で心優しい人でした。

でも今日、最後までそばに居てくれた彼女さえも、僕に別れを告げました。


悲しみたくても、悲しむ資格は僕にはありません。
それぐらい僕はクズ男です。
ここまでクズになるなら、小説家になるなんて夢を捨てたら?と、誰もが言うと思います。

そんなこともできません。
僕にとって、この夢は希望です。とてもとても、叶えたいと思います。


諦めることができないから、今もこの状態です。
はい、僕はクズな男です。
たくさんの人が、違う方向へ向かって歩いていいます。
誰もが幸せそうな顔を浮かべています。


そんな人々を見て、僕は自分を惨めに思い、悔しくて、涙が流れてきました。

なんでこんなにも自分が無能なのだろう?

なんで夢を叶えることもできないのだろう?


とても悔しくて悔しくてたまりません。


いっくん?
いっくん、小さい頃に僕が呼ばれていた名前。

懐かしい感覚がしたので、僕は声がした方へ振り返りました。

そこには、スーパーで買った野菜などが入れられているエコバッグと、
仕事用のトートバッグを持ち、
トレンチコートを着こなしている女性が立っていました。




やっぱりいっくんだ〜
と彼女は喜びながら僕に近づきます。
私のこと覚えてる?
彼女は僕の顔を覗き込みました。

もちろん覚えております。忘れることなんてありません。

彼女は僕の“幼馴染”です。

名前は柚木遥乃といいます。

そして僕は彼女のことを「はるちゃん」と呼び、彼女は僕のことを「いっくん」と呼びます。


久しぶりの彼女との再会が嬉しくてたまらなくなり、
僕は腰を抜かして喜んでしまいました。

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