あなたの下の名前side
ナヨンオンニと一緒にコロナの検査をしたらどっちも陽性だった。
わたしはまだ症状が軽くてもう熱も下がっているけど、ナヨンオンニは疲れもあってか高熱。
5日間は出国できない。
とりあえず事務所に連絡を入れてオンニとわたしのスケジュールを調整した。
サナにも伝えなきゃ。。
電話をかける。
昨夜熱が出た時にサナには一応報告していた。
「会えなくて寂しい、嫌だ」ってサナはそれを我慢してわたしの体調を気遣ってくれた。
その優しさに気付いた途端、会いたい気持ちが更に大きく膨らんだ。
電話の向こうで悲しそうに泣いているサナ。
側にいれないことが悔しくて仕方ない。
違う。
喧嘩したいんじゃない。
サナに伝えなきゃいけないことはほかにあるはずなのに。
それなのにサナを安心させてあげられる言葉が今は出てこない。
口から出る言葉は素直じゃない。
本当は言ってあげられたらいいんだと思う。
「オンニよりサナが好きだよ」って。
「サナのことだけを愛してるよ」って。
けどどうしてもツアーを完走したオンニのことを思うとその言葉が言えない。
だってオンニは本当に数週間会えていないわたしとサナのことを心配してくれているし、今も高熱で苦しんでる。
その事実と、サナへの恋愛感情はまた別。
サナにそのことを分かってほしかった。
今のサナに何を言っても伝わらない気がした。
人と付き合うって難しい。
いくら好きでも愛していてもそれを100%伝えるにはどうしたらいいんだろう。
これ以上話してもより喧嘩になってしまう気がして、そっと電話を切った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。