第52話

もし、結婚したらリクエスト
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2026/07/06 03:37 更新
春の終わり。

夜の7時。
こんばんはー
塾の自習室に入ると、いつもの席に見慣れた姿があった。

参考書を広げ、真剣な表情で問題を解いている亮平。

黒縁眼鏡をかけ、時々ペンをくるくる回しながら考え込んでいる。
亮平
蓮が声をかけると、亮平は顔をあげた。
亮平
あ、蓮
やっほー
亮平
やっほー
もう出会って半年。

大学4年生の亮平と、高校3年生の蓮。

年齢は違うけれど、塾では1番仲の良い存在だった。
今日も隣いい?
亮平
もちろん
蓮は当たり前のように亮平の隣へ座る。
亮平
英語?
うん
亮平は?
亮平
院試の勉強
今日も難しそう
亮平
全然進まない
亮平でも?
亮平
なにそれ俺でもって笑
2人で笑う。

静かな自習室。

聞こえるのはペンを走らせる音だけ。

それでも、不思議と隣にいるだけで落ち着いた。


1時間後。
亮平
休憩しよ
亮平が伸びをする。
賛成
2人は自販機へ向かった。
亮平
蓮、何飲む?
カフェオレ
亮平
また?
好きだから
亮平
子供だなぁ
亮平だって毎回ブラックじゃん
亮平
眠いから
大人
亮平
そこ褒めてる?
半分
亮平
半分か
笑いながら飲み物を買う。

ベンチへ座る。
亮平
そういえば
亮平が口を開く。
亮平
模試どうだった?
数学上がった
亮平
ほんと?
うん
亮平
やったじゃん!
嬉しそうに笑う亮平。

その笑顔を見るだけで、蓮まで嬉しくなる。
亮平が教えてくれたとこ出た
亮平
よかった
ありがとう
亮平
俺は何もしてないよ
してる
亮平がいたから頑張れた
その言葉に、亮平は少し照れたように笑った。
亮平
そういうこと普通に言うよね
え?
亮平
天然?
んー
亮平
絶対そうだよ
じゃあ……そうかも
亮平
ずるいな
何が?
亮平
なんでもない
亮平は視線を逸らす。


亮平side
危ない。
そんな顔で笑われたら、勘違いしそうになる。
閉館時間。
亮平
帰ろっか
うん
夜風が心地いい。

駅までの道。
亮平
ん?
亮平
受験、不安?
少しだけ考えてから答える。
不安
でも
亮平がいるから頑張れる
亮平side
まただ。
またそんなことを言う。

亮平は思わず笑う。
亮平
じゃあ最後まで応援する
約束?
亮平
約束
蓮は嬉しそうに笑った。

その笑顔に、亮平の心臓はまた少し速くなる。
じゃあここで
駅の改札。
亮平
また明日
亮平
うん
亮平
おやすみ
おやすみ、亮平
手を振る。

姿が見えなくなるまで。

2人とも振り返ってしまうことには、お互いまだ気付いていなかった。
家に帰った蓮。
ただいまー
返事はない。

リビングへ行き、ソファーへ倒れ込む。
疲れた……
スマホを見る。

亮平から一通だけメッセージ。
亮平
今日はお疲れ、また明日
それだけ。

たったそれだけなのに。
嬉しい
自然と笑ってしまう。
……亮平
今日はたくさん笑った。

一緒に帰った。

隣で勉強した。

それだけなのに。

すごく幸せだった。

ふと、今日駅前で見かけた親子を思い出す。

小さな男の子がお父さんに抱っこされ、お母さんが優しく笑っていた。
……。
もし。

もし俺が結婚するなら。

そんなことを考えた瞬間、頭に浮かんだのは1人だけ。
亮平
思わず名前を呼ぶ。

……好きなんだな
照れくさくて笑ってしまう。

そのまま目を閉じる。


子供
パパー!
元気な声。

小さな男の子が走ってくる。
おっと
抱き上げると、子供は楽しそうに笑った。
子供
高い高い!
はいはい
亮平
優しい声に振り向く。

エプロン姿の亮平が立っていた。
亮平
ご飯できたよ
今行く
亮平
今日はハンバーグ
子供
やった!
子供たちが飛び跳ねる。

一人。

二人。

三人……。

気付けば家の中子供たちでいっぱいだった。
子供
パパー!
子供
これ見て!
子供
抱っこ!
順番なー
笑い声が家中に響く。

亮平は優しく微笑みながら言う。
亮平
蓮、ちゃんと手洗って
はいはい
亮平
子供たちと一緒に返事しない
バレた?
亮平
ふふ
笑い合う2人。
……幸せ
思わず呟く。

亮平頑張れる首を傾げた。
亮平
どうした?
いや
亮平と家族になれてよかったなって
亮平
……急にそんなこと言う?
本音
亮平は少し照れながら笑う。
亮平
俺も
その笑顔が愛しくて。

蓮は幸せを噛みしめた。
……。
夢か
目を開けると、そこはいつもの自分の部屋。

静かな夜だった。
結婚とか
子どもとか
何考えてんだ、俺
そう笑いながらも。

夢の中の亮平の笑顔だけは、いつまでも忘れられなかった。
一旦きります。
後編へ続く。

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