第12話

考えがある その①
92
2024/03/23 03:00
エマ
エマ
外だー!
エマがボールを抱えて勢い良くハウスを飛び出す
イザベラ
イザベラ
エマ、待って
イザベラ
イザベラ
襟が曲がっているわ
エマ
エマ
わ、気づかなかった!
優しく微笑んでママがエマの襟を直す
そんなエマの様子を見たレイが「ガキ」とわざと聞える声で零した
そんなレイにエマが頬を膨らませて、仕返しと言わんばかりに「レイだってあなたの手掴んじゃってさー!」と言い返す
通りすがりのノーマンが「レイ、あなたの事好きだもんねー?」と声をかけると、レイは顔を赤くして「うるせー!!」と怒ってしまった
レイが私の手首を掴んでる以外はいつもの光景を見てママはクスクスと笑う
エマの髪を耳にかけてあげて、エマがお返しにママの頬にキスをする
イザベラ
イザベラ
行ってらっしゃい
エマ
エマ
行ってきまーす!
ママに返事をしたエマが走って私達の横を通り抜けた
ママが聞こえない距離で、聞こえない大きさでコッソリと手短に言葉を交わす
レイ
レイ
上出来
エマ
エマ
ありがとう、またあとで!
少し先で待っていたノーマンにエマが追いついて、「お待たせ、行こう!」と声をかける
ちなみに手首を掴む必要性を訪ねたら「うるさい」という1言を頂いた
たまに彼の言動がよくわからない



怪しまれないようバラバラに森へ集合して、調べた結果発信機は耳にあることを2人に共有する
レイ
レイ
しかし、耳か………
レイ
レイ
確かにこれは気づかねぇな、言われりゃあるけど
エマ
エマ
すぐに消えるし、私今までずっと疑って来なかった………ごめん
ノーマン
ノーマン
いや、お手柄だよエマ!
ノーマン
ノーマン
「場所」や「形」、「大きさ」がわかったから次に進める
「場所」の次、それは───

エ・ノ・レ 「「「壊し方」」」
取り出して調べても、髪をかき上げるフリをして触られれば即刻バレてしまう
レイ
レイ
個人を特定できない、「確認」無しにはわからない、門や塀に近づいても通知が無い
レイ
レイ
この3つの事を考えると………
あなた
機能は割と甘いね
レイ
レイ
でも何故か埋めている
あなた
それは、発信機さえ無事ならどこまでも追える自信があるっていう証拠かな
すると、ノーマンが何かに気付く
ノーマン
ノーマン
それって、もし通知がするなら「発信機が壊れた時」ってこと?
あなた
そう
エマ
エマ
えっ、どういうこと?
レイ
レイ
壊れたら追えない、壊れなきゃ追える
レイ
レイ
じゃあ壊れたときだけアラームとかですぐわかる様にしようって事だよ
エマ
エマ
壊したら、ママに知らせる…?
ノーマン
ノーマン
でもママが僕らにわざと発信機の存在を教えたって事は、バレても問題は無い………?
レイ
レイ
迂闊に触って壊すのも危ねぇ
ノーマン
ノーマン
壊すのはあくまで逃げる時だけって事だね
エマ
エマ
えっ、でも………じゃあ、壊し方どうすんの!!?
迂闊に触れない、でも壊さないと逃げれない
普通なら、ここでお手上げ状態だ
けれど私は、レイが発信機を壊す方法を編み出したのを知っている
あなた
(前回は判明したのが直前で不十分だった)
あなた
(でも今回は早めの段階で気付いてくれた………時間はある)
その期待通りレイは「心当たりがある」と言って名乗り出てくれたため、発信機の件はレイに一任することにした
ノーマン
ノーマン
あとは『全員を連れ出す方法』か………
あなた
みんなママを信じ切ってるから、ちょっと策を練らないと信じてくれないと思う
これまでのループでも、みんなに説明して説得するのはすごく大変だった
レイ
レイ
あとは単純に“能力不足”だな
レイ
レイ
運動が苦手な奴もいるし、ロクに動けない赤ん坊もいる
レイ
レイ
コイツみたいに速さはあっても体力が無ければ、持久戦になると一気に不利だ
あなた
…………
レイに親指で刺されながら、痛い所を突かれて何も言えなくなる
そう、どの人生でも死んでしまったのは殆どが私の体力の無さが原因だ
一度は振り切れて隠れても、体力が切れた状態で見つかると動けない
エマ
エマ
それについては考えた!
ノーマン
ノーマン
えっ
エマ
エマ
考えがあるの!あなたはちょっと大変かもしれないけど………
エマが申し訳無さそうにこちらを見てくる
あなた
……いいよ、大変でも
あなた
それで、みんなが脱出できるのなら












─ママ視点─

自由時間
レイはいつも通り木陰で本を読んでいるが、他の子供たちが見当たらない
イザベラ
イザベラ
あら、みんなは?
イザベラ
イザベラ
そういえば、あなたが珍しく外に出るのを見たけれど………ここには居ないのね
彼が特別視しているあなたが珍しく外に出ているのを見たため、てっきり側に居るかと思ったが、どうやら違うようだ
レイ
レイ
さぁ?
レイ
レイ
森で鬼ごっこじゃない?
レイ
レイ
少なくとも、あなたはエマに引っ張られてるのは見たぜ
本から一切目を離さず、興味無さげに答えているものの、少しつまらなそうな雰囲気があった
イザベラ
イザベラ
あらそう………大好きなあなたがいなくて寂しいわね
と、少しからかう口調で言ってみる
途端に顔を赤くして「別に、そんなんじゃ……」と否定するレイが面白くて思わず笑ってしまった

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