正直言って、脳みそごと洗い流したい気分だ。
ふらっと倒れたかと思いきや、抗う隙もなく殺される。
そんな事、あっていいわけなかった。
でも、この俺が気絶で呆気なく殺される以外に、どうも辻褄が合う死に方は見当たらないのだ。
大人しく受け入れるしか、なかったのか。
「りもこん」
この前、殺された理由に関して考え込んでいたら、隣に座るふうはやが心配そうにりもこんを見つめた。
どうも、この本には役に立ちそうなことはそんなに書かれていなかった。
「…この本、返してくるよ。ごめんね、りもこん」
かざねが申し訳なさそうに言う。
「大丈夫、気にしてない。せっかく見つけてきてくれたのに、ごめん」
「ううん。」
「…あー、かざね。俺、寄っていきたい所あるからさ、ついて行っていい?」
しゅうとがそう言って、本を抱えるかざねと一緒に席を立つ。
「うん。」
そうして二人が家を出る。
しゅうとは出て行く直前、意味ありげにふうはやに微笑んだ。
「…」
「…りも」
ぽす、とりもこんの肩にふうはやの頭が乗る。
「大丈夫だよ、敏充さんは諤々さんのこと残したくて残したわけじゃないよ、きっと。」
ふうはやの手が、そうっとりもこんの手の上に重なって優しく撫でる。
「…ふうはや、もしかしたら苦しくなるかもだけど…その…かざねの言ってた廃墟。行ってみようよ」
「…それで、りもこんの気持ちが整理出来るなら。いいよ。」
ふうはやの答えにふっと微笑んだりもこんは、そうっとふうはやの唇に己の唇を重ねる。
「ふうはや、コレ、したかったんじゃないの?」
突然のりもこんの言葉に、ふうはやは図星を突かれたような表情を見せた。
「なっ…」
「しゅうとがかざねと出掛けたのも、俺とふうはやを二人きりにさせようとしたんでしょ」
「…全部バレてたの、恥ずかし〜。」
ふうはやは顔を真っ赤にして、りもこんから逸らした。
「ふふ、可愛いね。」
「…それで、しゅうと達は何時ぐらいに帰ってくるの?」
「…2、3時間、くらい経ったら…?」
ふうはやの言葉に少し驚いたりもこんだったが、ふうはやの頬に自分の手を添えて目線を合わせてもう一度唇を重ねた。
「ん…っ」
「ねえふうはや。治るまでガマン、できなくなっちゃった?」
「なっ、え、?」
「だって、たかがキスだけで2、3時間もいらないでしょ?」
「〜〜〜っ」
「あと、2時間以上残ってるけど…楽しいこと、しちゃう?」
りもこんが、自身の指をふうはやの指と絡めて握る。
じっ、と見つめるその熱くて艶めかしいりもこんの目がふうはやだけを映して離さない。
「だって、期待してるんだもんね?笑」
「ぇ、う、でも…」
「約束しちゃったから、しない?」
ふうはやが、期待と動揺でうまく話せない中、りもこんはふうはやの言いたいことを真っ直ぐ言葉にする。
どうしよう、どうしよう。
ふうはやの頭の中で、天使と悪魔がグルグルと回っているようだった。
確実に果たせるという確証のない約束を優先するか、今手を伸ばせば掴むことのできる距離にある欲しいものを優先するか。
ふうはや、もやもやしていた。
「俺はいいよ?ふうはやがどうするか次第だから」
りもこんのその言葉に、思うように言葉が出ない。
ふうはやがどうするか考えている間も、りもこんは手を絡めて、じっと見つめているだけ。
鼓動が、うるさい。
いつもはおちゃらけているクセに、こういう時だけ男前なりもこんがズルかった。
ずっと、ふうはやの答えを待っている。
「りも、俺は───」
俺は、約束を破った。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!