岩泉 side
春高予選
伊達工とぶつかったが勝ち進み
次は対烏野
国見はまだ気づいて無ぇか……
ベンチを見れば
季節外れ、今の季節には絶対いない
ホタルが止まっている
試合が始まった
あなたの下の名前は烏野にも
春高ちゃんと見る、と伝えたんだろう
今回は……全員
あなたの下の名前のために戦っているんだろうな
ピーーーーー
試合終了の笛の音が鳴り響く
俺達は負けた
及川が投げた超ロングセットアップ
正直、完璧だった
助走のタイミング、ジャンプ
角度、高さ、全て完璧だった
涙でぐしゃぐしゃの顔を
客席から見えないよう
深い、深い礼をする
あなたの下の名前、ごめん……
俺、負けちまったよ
その時、羽音がした
普段だったら絶対キモいと思うが
今日だけは思わない
あなたの下の名前だ……
負けちまった、ごめんな
そう心の中で思っていると
耳の横で
確かにそう聞こえた
社会人になって一人暮らしを始めた
今日は久しぶりに青城で集まる
左手の薬指に
毎日はめている指輪が目に入る
そう言って家を出れば
あなたの下の名前が行ってらっしゃい
そう言った気がした
今日はお盆だ
あなたの名字あなたの下の名前
そう書かれた墓の前で
両手を合わせる
数々の思い出が脳裏をよぎる
目頭が熱くなるが
せっかくなら笑いたい
あなたの下の名前が書いたノートに
私のお墓、囲んでピクニックしてね
私の分も用意しといてよ?
って書いたから俺達は毎年ここで
ピクニックをしている
みんなで買った大きな花を
花瓶に入れれば
綺麗だな、なんて及川が言う
あの日から毎年山に行くが
あなたの下の名前は見当たらなかった
奇跡のような夏で
最初で最後の幻だったんだ
蛍火の約束、君を見た幻
end












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。