神高 下駄箱
ため息をつきながら、靴を取り出す。
自分でも、何が起きたのかよく分かっていない。
不思議なふわふわとした感情だけが心に残っている。
そんなことを考えながら校門に向かっている時だった。
突然、聞き慣れた大きな声が響く。
寧々達を追いかけ、そのまま先に行っているものだと
思い込んでいた。
天馬先輩に向かって頭を下げた。
そう言って、天馬先輩の横に並び、歩き出した。
天馬先輩の言葉に心臓が跳ねた。
なんて下手くそな嘘をつく。
天馬先輩の声にハッとする。
驚いて自分の手元をみる。
彰人くんに握られた手首を、もう片方の手で
無意識に抑えていた。
天馬先輩は、心配そうな表情でこちらを見つめてきた。
彰人くんに握られた手首をふと見つめる。
微かに、当時の感触がまだ残っている。
力が強くて、振りほどこうとしても、無駄だった。
そして、私よりもはるかに大きい手だった。
ちゃんと、男の子だった。
そう思った瞬間、顔が赤くなってしまった。
明日からどんな顔をすればいいんだろう。
きっと今まで通りの距離感じゃもう、いられない。
そんな気がした。
フェニラン
その時間はあっという間だった。
また神代先輩が脚本を書いてくれたのだろうか。
どんなショーになって、どんな演出になるんだろう。
そんなことに胸を躍らせながら、神代先輩の後を歩いた。
司side
今日は、あなたの下の名前の様子がおかしかった。
いつもなら話が弾むはずの話題も、単調な返事で
片付けられてしまった。
しかも手首を見つめては考え込んでいる仕草を見せる。
練習の話以外に、彰人と何かあったのだろうか。
寧々が声をかけてくる。
咄嗟にそう答える。
寧々に、今日のあなたの下の名前の様子を話してみた。
寧々が考え込んでしまう。
思わず大きな声を出してしまった。
俺が、あなたの下の名前のことを、?
素直な気持ちを伝える。
寧々がうなずきながらそう言う。
一呼吸おいて寧々がこう言った。
後々後悔する、?どういう意味だ、?
寧々がそう言ってステージのほうへ向かう。
自分の気持ちがますます分からなくなってしまった。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。