朝ご飯を食べ終わり、なんとなくキッチンで時間を潰したり
気まぐれに声をかけてくれた左近さんに着いていったりして
から数時間。
腕時計はもう12時に近い時間を指していた。
たまに赤羽さんのことを話しつつも、半ば見つけるのを諦めて
世間話でなんとかこの場をしのいでいる。
確かにちょっと目に隈がある気がする。
すぐに寝れないのは分かるかも。
あの部屋、リビングとかよりはましだけど湿っぽいし、
ベッドもあんまり寝心地よくないし。
左近さんは私の言葉に納得していない様子だ。
でも、私は移動した後にそんなことは起こらなかった。
よく分からないけど、多分たまたまなんじゃない?
そう言おうとした、その時だった。
少し遠くから聞こえてきた悲鳴が、耳を劈く。
一瞬頭が真っ白になった。
でもすぐに我に返って、左近さんと顔を見合わせる。
ことみちゃんだったらちょっとしたことでも叫ぶかもしれないけど、
あれは絶対ことみちゃんの声じゃなかった。
嫌な予感が頭をよぎる。
行きたくない。見たくない。もう、これ以上_
リビングには、ぼんやりと立っている砂川さんがいた。
けれど、私達を見た瞬間顔を上げ、近付いてくる。
そう言うと突然砂川さんは私の手を引いて走り出した。
左近さんは表情が強張りつつも私達を追いかける。
少しして、大きな扉の前で立ち止まった。
綾ちゃん達、愛菜ちゃんとか十河さん_
大抵の人は近くにいるのが見えた。
指が差された方向には、人が倒れていた。
その真下にはスプレーを撒いたかのように血が広がっていたり、
割れたガラスが散らばっていたりして、まるで1枚のイラストみたいだ。
でも、もう分かっていた。
瀬名ちゃんと突然話せなくなった時、泉さんが紺さんに
ナイフで首元を刺された時、分かってしまった。
これが現実であることに。
私は死体の方に駆けた。
遠くから見た時には気が付かなかったけれど、どうやら
2人死んでいるようだった。
1人は、平賀さん。もう1人は、結人だった。
首筋や両腕、両脚には深々と刃物が突き立てられた跡がある。
血は衣服を濡らし、そこから地面へと広がっている。
そっと触れると、体はもう人肌の温もりをほとんど失っていた。
突然現れた紺さんは私の隣にしゃがみ、傷口の上に指を滑らせる。
まだ乾ききっていない血が指にべっとりと付いたけれど
気にしていないみたいだ。
平賀さんの左腕から右腕、右脚、左脚。
それから結人の方に指を持っていき、同じようになぞっていく。
どうやら刺した順番を示しているらしい。
紺さんは、指を止めてこちらを見た。
リビングのテーブルのそばに、鍋が2つ転がっていた。
今日の朝に使っていた鍋も2つだから、それを使ったらしい。
中に入っていたらしいカレーは一部の具が潰れ、テーブルの周りが
かなり汚れてしまっていた。
紺さんはそう言って、呆れたように首を振った。


























編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。