第202話

第百五十頁 嘘転じて幸せ
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2023/07/10 22:00 更新
あらすじ
 第八の園の住人レイリンは、エテルと接触して現実世界に飛ばされてしまった。幸せを知る為、シオやエテルに再会する為に旅を続けている。

 現実世界でファルドラと出会い、共に暮らしながら防衛軍の仕事を続けることを決意した。そんなある日、パトとメリアと出会いパトの元に来ることをメリアから提案される。

 しかし、レイリンの心はファルドラの元に傾いていた。レイリンは、ネル達の力を借りてミール達を納得させることに成功。しかし、彼女には最後の壁が待ち受けていた、、、。
レイリン視点
 私の目の前に、私よりやや背の高い少女が居る。髪は長く、水色。目の色は私と同じ黄色だけど、機械族の証の紋様がない。
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
貴方は、、、。
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
人間としての、私?
 もう1人の私はふっと笑って頷いた。
????
そうだよ。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
私は人間としてのレイリン。正確に言えば、16歳くらいの私だね。
 私の身体の成長は、ずっと14歳のまま。機械族は体が成長しないのだ。私は生まれてから今年で16年。見た目が年齢に追いついたのか。そうか。機械族は髪が伸びないけれど、人間なら髪も伸びるのか。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
機械族と違って、人間は老いる。直ぐに色んなことを忘れるし、集団に依存する醜い心も持っている。
 そして、一呼吸置いてから暗い表情で言い放つ。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
簡単に死ぬ。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
それでも、貴方は人間になるの?
 人間のレイリンは試し、問いかけるように私に話す。確かに、人間は老いる。暴力も振るう。だけど、話したら分かり合えるし、私の好きな人も人間だ。
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
当たり前じゃん。
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
老いることがあっても、死ぬことがあっても、それは神にだって同じことが言えるんだ。
 肉体は老けなくても、心は老ける。条件が変わるだけで、神だったとしても、死ぬ。
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
何にだって“絶対”は無いんだよ。
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
幸せの形にも絶対はない。
 パトと一緒に居るのが幸せか、ファル君と一緒に居るのが幸せか。それは感じ方によって変わる。ミールはパトを選んで、私はファル君を選んだ。それだけの話。
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
だから、私は人間になることに躊躇いはない。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
、、、そう。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
最高の答えね。流石、私。
 人間のレイリンの後ろに一筋の光が差す。ファル君の声が聞こえる。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
行ってらっしゃい、私。
 人間の私が手を振って別れを告げる。多分、二度と会うことは無いだろう。だから、、、。
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
何言ってるの?貴方も行くんだよ。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
、、、え?
レイリン・クロシェット
レイリン・クロシェット
同じ私なんだから、ね?
 すると、人間の私は微笑んだ。この鈴が転がるような笑い方、私に似てるなぁ。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
うん!!
 私達は、手を繋いで一緒に現実世界へ行った。
現実世界ーファルドラ視点ー
 あの後、レイリンの体が現実世界にやってきた。さっきとは違い、髪が長くなっていて頭には青い薔薇の髪飾りがついている。

 髪が長くなったということは、身体が成長している証拠。つまり、レイリンは既に機械族ではない。

 しかし、目を覚ます気配はない。ここ数時間、ずっと寝ている。微かな胸の上下する鼓動から、息はあることが分かるから死んではいない。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
ん、、、
 レイリンの瞼が微かに動く。
ファルドラ・ニートロフ
ファルドラ・ニートロフ
レイリン!
 思わず身を乗り出してしまった。それに反応したのか、レイリンが目を覚ます。身体には猫耳も、しっぽも、草冠も羽も、なにも無い。帝園の契約もない、完全な人間だ。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
ここ、、、どこ、、、?
 まだ寝ぼけているのだろう。周りをキョロキョロ見渡している。
ファルドラ・ニートロフ
ファルドラ・ニートロフ
東京のホテルの一室だよ。成功したんだよ、【からくり少女の旅の果て】が。
 おかしい。反応が無い。まさか、、、。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
誰、、、ですか、、、それ、に、、、。私は、、、?
 そんな、、、そんな、、、。
ファルドラ・ニートロフ
ファルドラ・ニートロフ
記憶、喪失、、、。
 ここまで来て、こんなの、あんまりだろ、、、。


 だって、やっと、、、。
 何で、こんなことに、、、。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
ねえ、どうして、、、私は、、、
ポロッ
 レイリンが、泣いている。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
泣いてるの、、、?
 もしかしたら、心の奥底に元のレイリンが眠っているのかもしれない。僕は、レイリンの肩を掴んで呼びかけた。
ファルドラ・ニートロフ
ファルドラ・ニートロフ
レイリン、“忘れないでよ”。思い出して。僕は、ファルドラだよ?
 あの時、僕が惚れたような笑顔を見せてよ。何事もなかったかのように無邪気に笑ってよ。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
、、、?ファル、ドラ、、、。
フラッ
 まずい、ちょっと強く揺さぶりすぎたかも。レイリンがこっちに倒れ込んでくる。病み上がりだからまだ本調子じゃないのかも、、、。レイリンを抱き止めた。その時、、、。
チュッ
 頬に、柔らかい感触がした。
レイリン(人間)
レイリン(人間)
なーんて、ね。記憶喪失なんて嘘だよ!ファル君、だーいすき!!
 元気で明るい、いつものレイリンの声がした。
ファルドラ・ニートロフ
ファルドラ・ニートロフ
もう、、、。本当に、、、。
ファルドラ・ニートロフ
ファルドラ・ニートロフ
愛してるよ、レイリン、、、。
 レイリンは、誰よりも嘘つきな幸せ者だ。いや、僕が世界一の幸せ者にしてみせる。
からくり少女の旅日記・完結

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