第32話

#32 今晩は
16
2026/03/08 21:27 更新



Noside











数日後。





夜。
東京の呪術高専。
















静かな廊下。
任務から戻ったあなたは
屋上にいた。










夜風が吹く。



星が見える。





























手の中には
傑のピアス。

ずっと持っている。





















あなたは空を見る。
















『……傑』









『ちゃんと』
『やってるよ』























『約束』
『守ってる』































静かな夜。
誰もいない。















はずだった。







その時。

ふっと
風が止まる。
空気が少し揺れる。

あなたが振り向く。






















そこに
人影。
黒い服。
長い髪。




















そして
あの優しい目。







傑だ。

























あなたの呼吸が止まる。















『……え』
『……え?』













声が震える。

『傑?』























傑は困ったように笑う。



〈こんばんは〉
『……嘘』







あなたが立ち上がる。
震えている。




『なんで』
『なんでいるの』










傑が肩をすくめる。







〈さあね〉























あなたの目から
涙が一気に溢れる。




『……バカ』
『……バカ』
『遅い』
























走る。
思いっきり。

そして
抱きつく。











でも
体は
少し透けている。
完全には触れられない。

それでも
抱きつく。
















『……ばか』
『どこ行ってたの』














傑は少し驚く。
でも
優しく笑う。







〈ごめんごめん〉
〈泣くほど?〉















その時。
屋上のドアが開く。


















ガチャ。










「おーい」





入ってきたのは
五条悟。

悟は歩きながら言う。


















「こんな夜に一人で何──」

















言葉が止まる。

目の前の光景。



















あなたが
空中に抱きついて泣いている。









悟が眉をひそめる。









「……おい」
「大丈夫か」














その瞬間。















悟の六眼が
何かを捉える。







悟の目が
見開く。















「……は?」







悟の視線の先。
そこに立っている。

傑。
傑が悟を見る。





















そして
ニヤッと笑う。














〈やあ、久しぶり〉


















悟が固まる。
数秒。






そして
悟が言う。
























「……夢?」














〈ひどいな〉

















悟が頭をかく。







「いや待て」

「いや待て待て」
「マジ?」




















〈マジ〉













悟が笑う。
でも
その目が少し濡れている。























「……はは」
「会えたじゃん」















悟が近づく。
でも
途中で止まる。





触れられないのが
分かるから。




















悟が小さく言う。


















「バーカ」

〈なんでだよ〉



















悟が笑う。









「遅ぇんだよ」



















沈黙。
三人の間に
静かな夜。




























あなたはまだ抱きついている。
泣きながら。

傑が言う。














〈そんな泣く?〉













あなたが顔を上げる。
涙だらけ。















『当たり前』
『バカ』

『死んだと思った』

















傑が少し優しく言う。





〈まあ〉
〈死んでるけどね〉






















悟が吹き出す。







「お前ほんと変わんねぇな」
















風が吹く。
その時。

傑の身体が
少し薄くなる。















あなたが気づく。







『……え』
『待って』





傑が少し困る。



〈やっぱ長くはいられないみたい〉





























あなたが強く抱きつく。











『嫌だ』

『まだ』

『話してない』



















悟が静かに言う。

「……また来いよ」
「…亡霊だから、また来れるんだろ」





















傑が悟を見る。
少し笑う。





〈気が向いたら…笑〉

















あなたが泣きながら言う。








『絶対』
『絶対来て』

『約束』




















傑が優しく言う。




〈うん〉
〈じゃあ、また〉














その瞬間。
身体が光になる。

少しずつ
消えていく。






でも





最後まで笑っていた。















そして
消える。








夜。
静寂。













あなたの手には
まだ
ピアス。









悟が空を見る。
そして小さく言う。




















「……また来るな」















あなたが頷く。







『うん』




























二人は
しばらく
空を見ていた。

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