第13話

怒りと嘆き
8
2025/01/27 22:49 更新
ダリア
ダリア
紅炎ちゃんを…助けてほしい?
蒼鱗くんの言葉を繰り返すと、彼は項垂れるように同意した。だいぶ沈んでいるところを見るに、どうやら火急の案件らしい。冷静な彼らしくもなく、詳細を話す余裕すら欠いているようだった。
白夜
白夜
助けろと言われても、それだけではどうしようもない。
蒼鱗
蒼鱗
…そう、だな。うん、詳しく話す。
彼は小さく咳払いを1つして、事の詳細を語り始めた。
蒼鱗
蒼鱗
唐煌カラファル霧狭間きりはざまの中間くらいに、魔物が群れを作ってるのは知ってるか?
ダリア
ダリア
知らない。
白夜
白夜
知ってはいるが、大した数ではないと記憶しているが?
流石に唐煌を守っているだけあって、白夜は知っていたみたい。蒼鱗くんは白夜の言葉に首を振り、「数の問題じゃないんだ」と弱々しく言う。
蒼鱗
蒼鱗
その中にいる群れの頭が、かなり知能が高いらしい。個体の力も強い。…既に_モウ家でも何人かの祓い屋を送ったが…殆んど帰ってきていない。
ダリア
ダリア
…っ!
殆んど帰ってきていない…それが何を意味するのかが、あまりにも暗くこの場の空気を暗くした。
白夜
白夜
だが、その事に童の姉は関係ないだろう。"然家として"俺に頼むなら分かるが、"弟として"頼むことの意味が分からない。
確かに、白夜の言う通りだ。
先程までの話を聞くに、魔物の群れが手に終えないから掃討して欲しい、という内容に聞こえる。その中に紅炎ちゃんが出てくる気配がない。然家のご令嬢である紅炎ちゃんが単独で魔物を祓いに行って、まだ帰ってきてないというなら分かるけど、蒼鱗くんの口振りにそんな様子は見受けられなかった。
しかし蒼鱗くんは、ついでとんでもないことを口にする。
蒼鱗
蒼鱗
紅炎は…霧狭間の近くに自生する植物を取りに、丸腰で出ていったきりなんだ。2ヶ月間。
ダリア
ダリア
………。
白夜
白夜
…はぁ…。
予想外の事に絶句して言葉も出ない私に対して、白夜は呆れたように溜め息をついた。
紅炎ちゃんは…少し無鉄砲な所はあった。と、思う。でも、自分から危険な場所に飛び込むなんて考えてもいなかった。
白夜
白夜
まず聞きたいのだが、何故2ヶ月間放っておいた?お前が行けばいいじゃないか。
蒼鱗
蒼鱗
………。父……当主が、許可しない。僕は跡取りとして必要だから。逆に姉である紅炎は、跡目争いの火種になりかねない。要するに、父は姉の事をどうとも思っていないんだ。
白夜
白夜
……人間も、堕ちたな。
白夜が重々しく告げると同時に、その場に暫しの沈黙が落ちる。白夜の気持ちは痛い程分かった。
私も人間と区別していいのか分からないくらい、人間達から隔絶して生きてきた。だから今この瞬間も、どこか他人事のような、白夜と同じ視点から眺めているのに近い。
そこで思った感情は、人間とはこんなにも無情なものなのか、だけ。
レーネ村の人達が私を生贄にしたのもなかなかだが、それは私が呪い子だったから。生きたいと願う人達からしてみれば、私はただの邪魔でしかない。
でも紅炎ちゃんは父から、はっきり邪魔だと思われている。ただ個人としてみるのではなく、肩書きだけで。
白夜
白夜
それで俺に、姉を探して欲しいというわけか?
蒼鱗
蒼鱗
……そうだ。
白夜
白夜
…名誉も外聞も、捨てたことになるぞ。
姉のために祓い屋本業が、鬼の手を取った事になる。唐煌の民衆からの目は、確実に悪くなるだろうな。
蒼鱗
蒼鱗
…っ!
ダリア
ダリア
白夜、何もそこまで言わなくても…。
蒼鱗くんに対して強く当たる節がある白夜は、今回も蒼鱗くんを傷付けるような言葉を選んでいる。蒼鱗くんも痛いところをつかれて反論できずにいるので、流石にすこし窘めた。
ダリア
ダリア
蒼鱗くん、白夜は伝わりにくいだけだから、気を悪くしないで…。多分、「お前は見ているだけでいいのか」って言いたいんだと思う。
蒼鱗
蒼鱗
ーーー…。
白夜は怒っている訳ではないし、紅炎ちゃんを見捨てる気も更々ない。では何故こんなに蒼鱗くんに当たりがキツいかと言えば、多分さっき、私がいる前で攻撃してきたからだろう。
不死である白夜にとっては平気だろうが、私は怪我もするし命も落とす。私を巻き込みかけた事に対して不満を抱いているんだろうな。
白夜
白夜
…明日にでも殲滅に行く。
俺は人間の童1人がいようがいまいが関係ない。
白夜がそう言い切ると、話はそれで終わりになった。
蒼鱗くんも暫く立ち尽くし、俯きながら何かを考えていたが、やがて部屋を出ていった。
2人きりになった室内も、静寂に満たされる。
ダリア
ダリア
…ねぇ、白夜。
白夜
白夜
なんだ。
ダリア
ダリア
さっきから蒼鱗くんに怒ってるの、私が巻き込まれそうだったからだよね?
白夜
白夜
………。
白夜は腕を組み壁にもたれ掛かると、ふいと顔を背けてしまった。答える気はなさそうだけれど、その態度が物語っている。
ダリア
ダリア
…怒ってくれて、ありがとう。
照れているのかいないのか。素直に礼を告げると、白夜は咳払いのような溜め息をして、ふっと姿を消してしまった。
主)こんにちはこんばんは!きなこもちです!

突然ですがきなこもちは戦闘シーンを書くのが本当に苦手です。あの白夜と蒼鱗の短い掛け合いだけでも苦痛でした。

なので白夜が魔物蹴散らすのが書けなすぎて、前置きをとんでもなく長くしてしまうという珍事。すみません。

蒼鱗は紅炎の事でいっぱいいっぱいなので余裕なさそうに描いてます。というか白夜に指摘されまくって自信なくしてるだけかもしれませんが。

さー頑張って戦闘シーン書きますか!
よかったら応援しててください!

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