蒼鱗くんの言葉を繰り返すと、彼は項垂れるように同意した。だいぶ沈んでいるところを見るに、どうやら火急の案件らしい。冷静な彼らしくもなく、詳細を話す余裕すら欠いているようだった。
彼は小さく咳払いを1つして、事の詳細を語り始めた。
流石に唐煌を守っているだけあって、白夜は知っていたみたい。蒼鱗くんは白夜の言葉に首を振り、「数の問題じゃないんだ」と弱々しく言う。
殆んど帰ってきていない…それが何を意味するのかが、あまりにも暗くこの場の空気を暗くした。
確かに、白夜の言う通りだ。
先程までの話を聞くに、魔物の群れが手に終えないから掃討して欲しい、という内容に聞こえる。その中に紅炎ちゃんが出てくる気配がない。然家のご令嬢である紅炎ちゃんが単独で魔物を祓いに行って、まだ帰ってきてないというなら分かるけど、蒼鱗くんの口振りにそんな様子は見受けられなかった。
しかし蒼鱗くんは、ついでとんでもないことを口にする。
予想外の事に絶句して言葉も出ない私に対して、白夜は呆れたように溜め息をついた。
紅炎ちゃんは…少し無鉄砲な所はあった。と、思う。でも、自分から危険な場所に飛び込むなんて考えてもいなかった。
白夜が重々しく告げると同時に、その場に暫しの沈黙が落ちる。白夜の気持ちは痛い程分かった。
私も人間と区別していいのか分からないくらい、人間達から隔絶して生きてきた。だから今この瞬間も、どこか他人事のような、白夜と同じ視点から眺めているのに近い。
そこで思った感情は、人間とはこんなにも無情なものなのか、だけ。
レーネ村の人達が私を生贄にしたのもなかなかだが、それは私が呪い子だったから。生きたいと願う人達からしてみれば、私はただの邪魔でしかない。
でも紅炎ちゃんは父から、はっきり邪魔だと思われている。ただ個人としてみるのではなく、肩書きだけで。
蒼鱗くんに対して強く当たる節がある白夜は、今回も蒼鱗くんを傷付けるような言葉を選んでいる。蒼鱗くんも痛いところをつかれて反論できずにいるので、流石にすこし窘めた。
白夜は怒っている訳ではないし、紅炎ちゃんを見捨てる気も更々ない。では何故こんなに蒼鱗くんに当たりがキツいかと言えば、多分さっき、私がいる前で攻撃してきたからだろう。
不死である白夜にとっては平気だろうが、私は怪我もするし命も落とす。私を巻き込みかけた事に対して不満を抱いているんだろうな。
白夜がそう言い切ると、話はそれで終わりになった。
蒼鱗くんも暫く立ち尽くし、俯きながら何かを考えていたが、やがて部屋を出ていった。
2人きりになった室内も、静寂に満たされる。
白夜は腕を組み壁にもたれ掛かると、ふいと顔を背けてしまった。答える気はなさそうだけれど、その態度が物語っている。
照れているのかいないのか。素直に礼を告げると、白夜は咳払いのような溜め息をして、ふっと姿を消してしまった。
主)こんにちはこんばんは!きなこもちです!
突然ですがきなこもちは戦闘シーンを書くのが本当に苦手です。あの白夜と蒼鱗の短い掛け合いだけでも苦痛でした。
なので白夜が魔物蹴散らすのが書けなすぎて、前置きをとんでもなく長くしてしまうという珍事。すみません。
蒼鱗は紅炎の事でいっぱいいっぱいなので余裕なさそうに描いてます。というか白夜に指摘されまくって自信なくしてるだけかもしれませんが。
さー頑張って戦闘シーン書きますか!
よかったら応援しててください!















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。