朝の8時。
目覚ましの音が部屋に鳴り響いてた頃、一人の男がどたどたと走って来た。
男ーーーーー否、勝也は、現役高校生だ。
クラスでの地位も高く、男友達も多い。
女子にも、嫌われてはいない方だ。
急いでシャツを着る。
急いで階段を降り、玄関へ向かう。
大急ぎで靴を履いて家を出る。
勝也はチャリ通だ。
車よりは遅いが、歩いたり、走るよりは早い。
その割にも、狭い道を通って移動できる。
全力疾走ならば、車にも追いつく時もある。
学生にとってはチャリ通が1番だと勝也は思っている。
信号へ通りかかった。
今は青。急いで行かなければ、間に合わない。
間に合った。
そう、ふと思った瞬間、意識が飛んだ。
今もまだ青。
だが、勝也は
自転車ごと
轢かれていた。
周りの人々が混雑する中、勝也はまだ
意識を保とうとしている。
血が、体が、
助からないのか?
これからでも
俺が、頑張って、意識を保ってても
助けられないのか
ーーーー母さんに、しっかり挨拶すべきだったな。
ーーーーもっと、周りを見ていれば。
頭に浮かび上がるのは後悔、後悔、後悔、後悔
ーーーーあの時、ああすれば良かった。
ーーーー弁当、どうなった?
ーーーー最後の、母さんからの、弁当
ーーーー学校の皆、悲しむのかなぁ
後悔、後悔、後悔、後悔後悔後悔後悔後後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔後悔ーーーーーー
死んだ。
音が、途切れた。
一度だけ。一度だけでいいから
母さんに
ありがとうって言いたかったな…
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知らない、声。
ただ、心配されている。
だが、勝也は音だけしか認識できない。
きっと、車に轢かれたせいだろう。
そこで、知らない声は消えた。
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目を開けると、しらない物だけが待っていた。
病院にしては人もいない。
静かだ。
何か、声に違和感を覚えた。
いつもの声にしては、高すぎる。
起き上がろうとすると、髪の毛が肩からずり落ちてきた。
ベットから起き上がる。
下を見ても足が見えない。
明らかに違う自分の手。
目線が低く、周りが見えずらい。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!