
あ〜、お腹いっぱい〜
よ〜し、依頼遂行開始だぁ~
リンは、ターゲットとなった会社の
内部情報を集めるために……

今日から新入社員として
お世話になるリンです。
よろしくお願いします!
なんと、ターゲットの会社に
新入社員として入社しました。
うん、よろしくね~
か、可愛い…
新入社員が来るって聞いてはいたけど、
こんなに可愛い子だとは思わなかった
分からないことがあったら、
遠慮なく聞いてね!

ありがとうございます
あ、あのさ…リンちゃんって
呼んでも良い…かな?

良いですよ。
お好きなようにお呼びください
じゃあ、私はリンって呼ぶわね
俺はリンちゃんって呼ぶことにするわ
僕は、無難にリンさんで…
と、そんな感じで新入社員紹介が終わり、
入社一日目は大きなトラブルもなく
終わると思われたが……

ちょっとあんた!

あの、PCってどうやって
使えばいいんですか?
(本当は知ってるけどね)
えっとね、まずこの丸いのを押すの。
すると、電源が入るから………

ちょっと!無視しないでちょうだい!

……なんですか?
気怠そうな声色で、
リンは女性社員に対応した。

あんたね、ちょっと可愛くてチヤホヤされて
周りから優しくされてるからって、
調子に乗らないでもらえるかしら?

調子に乗った覚え無いんですけど……
(うーわ、ダルッ)

調子に乗ってるじゃない!
わざわざPCの使い方分からないふりして!

知らないフリじゃなくて、
本当に知らないんですけど……
そうだよ。
リンちゃんはIT機器とは
無縁の環境で育ったんだから、
知らなくて当然。
リンちゃんの履歴書読んでないの?

はぁ?
読むわけないじゃないの、そんなもの。
そもそも、新入社員ってだけで
優しくされるのが気に入らないのよ!

嫉妬は男女関係なく見苦しいですね

なによっ!
二人の間……というよりは、
女性社員の方が一方的に
バチバチとした視線をリンに向け、
その場は一触触発の状態に。
一瞬で空気が悪くなった。
そんな場の空気をなんとかしようと、
一人の社員が仲裁に入り、女性社員に話しかけた。

はい、そこまで。
このままだと殴り合いしちゃいそうだから、
一旦落ち着こう?ね?

何よあんたっ!
……いいわ、冷めた。
今日のところは
この辺で勘弁しておいてあげる
女性社員は不服そうな顔でそんな捨て台詞を言ったあと、自分のPCがある机へ戻っていった。

大丈夫?

あ…はい
ありがとうございました

お礼を言われるようなことじゃないよ。
でも、やっぱりお礼を言われると嬉しいね

今の、気にしなくていいからね。
あの人は自分が気に入らないものは
すべて攻撃する人だから。
決して、君が悪いわけじゃないからね。

はい…分かりました
ありがとうございました

敬語、やめてほしいかな…
君に堅苦しい言葉は似合わないよ

でも、恩人には礼儀正しくしろ、
って教えられましたし…

恩人だなんて、
俺はそんな大げさな者じゃないよ

……だから、その堅苦しい話し方を
やめてほしいんだ。
君に堅苦しい話し方は似合わないから

そこまで言われるのなら…
分かりました…じゃなくて、分かった

うん、その喋り方のほうが、
君には似合ってる
さてと、初日からトラブルがありましたが、
優しい社員さんたちのおかげで、
大きなトラブルにはなりませんでした。
一人、やたらとリンを口説こうとしている
男性社員が居ましたが、
リンは全く気づいていないようです。
そんなこんなで、
リンの新入社員としての
潜入が始まりました。
そうして、数日が経った頃……

(だいぶ馴染めてきたかな)
リンは周囲に完全に馴染んでいました。
そして、仕事をするふりをして
会社のPCから内部データにアクセスして、
不正の証拠を探していました。

(見つからない……
普通ファイルじゃないなら、
シークレットファイルか)
シークレットファイルとは、
条件を満たさないと表示されず、
かつ条件を好きなように設定できる…
というファイルのこと。

(まぁ、不正の証拠になりかねないデータを、簡単にアクセスできる場所に保存するわけないよね)

(シークレットファイルに
アクセスしたい時、
ハッキングは非常に便利だ。
準備と後処理さえしっかりやれば、
痕跡も残らない)

(ただ、
私はこの方法は最終手段にしている。
他にもシークレットファイルに
アクセスする方法はあるからだ)
そうして、リンがシークレットファイルに
アクセスする準備を始めようとした時だった。

ちょつと、新人!
初日にリンに絡んできた女性社員が、
大声でそう叫んだ。
そのことに、リンはドキッとした。

(もしかして、シークレットファイルに
アクセスしようとしたの、バレた……?)
なぜなら、シークレットファイルに
自分がアクセスしようとしたのが
バレたのではないかと思ったからだ。
しかし、その心配は杞憂に終わった。

この統計調査表、
入力されたデータが間違ってるわよー、
それも全部ね
フロア全体に聞こえるほどの大きな声で、
女性社員はそう叫んだ。
しかし……

はぁ、そうですか
では、修正するので統計調査表をください

なっ、なによその反応は!
面白くないわね…
リンは女性社員の予想の斜め上の反応をして、逆に女性社員を困惑させた。

……これよ
そう言って女性社員は
リンに一枚の紙を渡した。
渡された紙を見て、
リンは思わず眉をひそめる。

うわっ……これデータが間違ってる以前に、
レイアウトとかグチャグチャじゃないですか……

うるさいわね。
それ、アンタが出したやつだからね!

そうでしたかね?

そうよ!
ほら、さっさと直しなさいよ!

はいはい、わかりましたよ
リンは呆れたようにそう返事をすると、
PCと向き合って修正作業を始めようとした、
その時だった。

そんな作業、リンさんがやる必要ないよ

何よあんた、またそこの新人庇って!
何なのよっ!
一人の男性社員が、
女性社員に立ち向かう形で
言葉を発したのだ。

あ、別にいいですよ、やりますので

いやいや、
君がこんな作業をする必要性はない

そもそも、この作業はこの資料を作った
アナタがやるべきだ。
男性社員は女性社員を指差し、そう言った。

はぁ?
私はそんなグチャグチャな資料、
作ってないわよ!
言いがかりはやめてくれるかしら?

いいや、言いがかりなんかじゃない。
そもそも、リンさんは
この資料を作る担当じゃない。
そしてこの資料の担当は、
アナタでしたよね?

……!
う、うるさいわねっ!
もういいわ!
男性社員に言われたことが図星だったのか、
女性社員は慌てた様にそう言って、
自分のデスクへ戻っていった。

じゃ、この資料は
さっきの社員に渡してくるから、
俺に渡してもらえるかな?

あ、うん。はい
男性社員はリンから資料を貰うと、
先程の女性社員のデスクへと歩いていった。

………
(あの男性社員、やけに優しいな。
何か裏でもあるのかな?
……まぁいいか。依頼を優先しよう)
#1-3へ続く……
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