第73話

epilogue
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2024/09/27 09:00 更新
あれから10年。

私たちはどうなったかって?

流星はもうすぐ30才。

大学卒業して、製薬会社の開発研究者になった。

夢をちゃんと叶えた。

私は28才になる年。

私もちゃんと夢を叶えた。

今は中学校の保健室の先生。

私たちは3年前に結婚した。

私は今、ちゃんと藤井さん。

私のお腹には赤ちゃんがいる。

男の子。

ただ今産休中。

もういつ産まれてもおかしくない。

だから2人っきりのデートをたくさん楽しんでる。

…相変わらず激重だけど。

季節は初夏。

梅雨入り前。

今は流星と手をつないでお散歩デート中。

ふじい
お腹張ったりしてへん?
あなた
うん、大丈夫だよ。
ふじい
ほんま?あなたはすぐ無理するから…
あなた
今は無理してない。そんなんで子供産まれたらどうするの?
ふじい
あなたへの愛は変わらんよ?
あなた
そうゆうことじゃなくて…子供に過保護になるの?
ふじい
どうやろな。男の子やからならん気がする。
あなた
女の子だったら?
ふじい
…なる。
あなた
女の子産めないね。
ふじい
いや…きょうだいたくさん作るで?
あなた
…産むの私なんだけど。
ふじい
ちゃんと子育てするで?オムツ換えもミルクも風呂も全部やったるで!
あなた
頼もしい。
ふじい
奥さんのためやったら何でもできんねん。
あなた
子供産まれても?
ふじい
俺、奥さんが大好きすぎる自信しかない。今も人前やなかったら抱き締めたい。
あなた
…もう。
ふじい
何年経っても、子供何人産んでも、おばあちゃんになっても、死ぬまでずっと愛してんで?
あなた
相変わらず…
ふじい
激重やで?
この激重に助けられてきた。

まっすぐな愛情はあの頃と変わらない。

それがまた心地いい。
ふじい
…あの頃と同じやな。
あなた
えっ?
ふじい
西陽さしとる葉桜。
あなた
これなんて言うか知ってる?
ふじい
…この葉桜?
あなた
そう。桜若葉って言うんだって。きれいな響きだよね。
木を見上げると、眩しくて手をかざした。

あの時もこんな感じだったのかな。
ふじい
君の手と、桜若葉に、ひかり射す。
あなた
…何それ?
ふじい
俺が作った俳句、どう?
あなた
…わかんない。
ふじい
えー?渾身の一句やったのに!
あなた
俳句詳しくないもん!
ふじい
でも…あなたはあの頃と何も変わってへんな。
あなた
おばさんになったよ?
ふじい
何も変わってへん。
そう言いながら私の頭をなでる。

流星の笑顔は、少し大人っぽくなった。

でも、私を見つめる目は、あの頃と変わらない。


何年、何十年経っても、こうして2人で手をつないで歩けたらいいな。


…幸せだな。







fin.

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