ファイナルが終わる。
ステージの上は、ざわめきに包まれていた。
名前を呼ばれた人、泣いている人、笑っている人。
感情が一気に溢れて、空気が少し重たい。
俺は、席に座ったまま、その光景を見ていた。
ハオの周りに、人が集まっていく。
肩を叩かれて、抱きしめられて、何か言われて。
ハオは戸惑いながらも、
ちゃんと一人ひとりに応えている。
思わず、そう呟く。
前は、隣に一人いれば十分だった背中が、
今は、たくさんの手に囲まれている。
ハオと同じ事務所のアンシンが先に飛び込んでいくのが見える。
大きな動きで、分かりやすい祝福。
ハオが笑って、少し照れたように頭を下げる。
カイウェンも、少し遅れて近づく。
距離を測るみたいに、一歩手前で止まってから、
そう言って、深く頭を下げる。
ハオは慌てて手を振る。
そのやり取りを見て、俺は小さく息を吐いた。
——もう、俺が立つ場所じゃない。
寂しさがないわけじゃない。
でも、それより先に来る感情があった。
一人分だった夢が、
今は、たくさんの人の中で続いている。
ハオが、ふと顔を上げる。
一瞬だけ、客席の方を見る。
俺は、反射的に背筋を伸ばした。
——気づくな。
——でも、気づいてほしい。
ハオの視線が、少しだけ止まる。
すぐに、誰かに声をかけられて、また囲まれる。
俺は、ゆっくりと肩の力を抜いた。
誰に言うでもなく。
あいつはもう、
一人で立つ人じゃない。
たくさんの人の中で、
ちゃんと、前に進んでいく人
俺は、拍手が残る会場で、
静かにそのハオの背中を見つめ続けていた。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!