相澤side
急に怨恨さんを中心として霧が濃くたち込めた。視界が使えなくなるほどの霧が晴れた時には怨恨さんの姿はもうどこにもなかった。監視対象である怨恨さん。根はいい人なんだろうが如何せん言葉が胡散臭すぎる。表情から何を考えているか分からないところが胡散臭さにさらに拍車をかけている。何より俺が怨恨さんを疑っている理由は心霊に対して本気でいるところだ。勿論、怪談や都市伝説と呼ばれるものは山田から昔聞かされ知ってはいる。だが、それは創作の話であって本気で信じていない。幽霊も同じだ。だからこそ怨恨さんのしている「心霊相談所」というのも詐欺だと思うのは当然だろう。なら、怪しいのは怨恨さんがやけに触れられるのを嫌がっていたあの「三面鏡」だろう。
怨恨さんの部屋の端のほうに置かれた三面鏡。檜で出来ていると思われ、鏡は閉じた上で布がかけてある。下の方は引き出しになっているようで上側が浅めの引き出し。下側が深めの引き出しとなっている。
ファイルの中身を見てみれば書いてあるのは、名前・性別・何かの日付、が1セットになり上から下までびっしりと並んでいる。ここに閉じてあるのはみんな同じ内容のものだろう。
慎重に布を外し、三面鏡を開く。!?なんだこれ、鏡なんだから写るのはこの怨恨さんの部屋の景色のはずなのに、実際写っているのは暗く荒れた土地のどこか外の景色で死人のような顔色の人達がふらついている。
「「「「「「「おいで!おいでぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」」」
反射で避けたが間に合わず鏡から伸びてきた大量の手に腕を捕まれる。その場で耐えようとするがそれ以上の力で鏡へ引っ張っられる。俺の個性で見ても消えないからまず、個性ではない。となると、鏡へ引きづりこまれたらマズイと経験上分かる。
怨恨さんの崩れた口調と地を這うような声が聞こえ勢い良く振り返る。入り口に立つ怨恨さんの表情から笑顔は消え真顔になっている。鏡の中へ向ける視線はゾッとするほど冷たい。
俺の腕を掴んでいた手が離れ鏡の中へ戻っていく。騒いでいた何者かたちもおとなしくなった。いや、鏡の中から怨恨さんの様子を伺っている?恐れているのか?一体何者なんだ。
side相澤 終了

















編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。