自分は、他の子とは違う。
幼いながらにそんなことを察したあの出来事を今でも鮮明に覚えている。
普段から「刀也様」と呼ばれていたので、新鮮で好奇心が生まれた。
お母さんの膝の裏に隠れながら、覗き込んできた大きな男の人の目をじっと見つめていた。
幼い自分にとっては、その光のない真っ黒な瞳は少しだけ怖かった。
気持ちの悪い笑みを浮かべていたような気がする。
ねっとりとしていて、湿るような。そんな笑み。
お母さんはその男の人を家にあげた。
確か、お茶を準備していた。
僕はその間、ずっとその男の人と向かい合うことになった。
変な汗が背中をつたった。早くお母さんが来ないかなと思っていた。
僕の付き人が丁度席を外したタイミングで声をかけてきた。
なんとなく、聞きたくなかった。
あんまり、喋りたくもなかった。
それでも、口だけは勝手に動いた。
雷の落ちる音がした。
豪雨ではなかった。
その男は、重い雨粒のように言葉を漏らした。
僕ではない、僕の中にある「何か」を求めるようなその声。
聞いた時に、ちょうど酷い雷鳴がなっていた。
・
家にいるといつも一人だったから、よく家を抜け出していた。
使用人たちはいい人ではあるが、村長の息子である僕を恐れているのか遠慮しているのかあまり話しかけてこなかった。
その影響で家の中に娯楽がなかったからか、僕は外への好奇心が人一倍強かったのだ。
村の人はみんなやさしくて、外に出た僕とよく遊んでくれた。
特に村の人達の空魔法が好きだった。
人それぞれの「空間」に対する捉え方、価値観がそのまま現れる魔法はとても面白かった。
人間観察が好きなのは多分この頃からだろう。
僕もいつかあんな魔法が使えるようになるかな、と希望を抱いていたころだ。
…まぁ、空魔法以外の魔法が存在することを知ったのはだいぶ後の話ではあるが。
また、いつものように家を抜け出して外をただぶらぶらと歩いていた時。
ふと、森の中へと通ずる小道を見つけた。
この村にまだ知らないとこなんてあったのか、と子供らしからぬ傲慢なことを思いながら、これまた好奇心にかられそっと足を踏み入れる。
小道は大人が一人ギリギリ通れそうな大きさで、あまり整備はされていなかった。
風鈴の音でも聞こえてきそうな森の爽やかさに、足を進める速度が速くなる。
未知の場所に恐怖なんかはなくて、ただひたすらに楽しくて、面白かった。
5分くらい歩いただろうか。
木しかなかった視界が、一気にひらけた。
小さな広場のようになっているそこは、太陽光を遮る木がなくなりそこだけ太陽が照っていた。
真ん中には、石でできた小さな祠のような物があった。
日の光に照らされて輝く祠の中には、謎の勾玉のようなものが置いてあった。
触れたい。
そう、本能で思った。
僕は紫色の勾玉にゆっくりと手を伸ばし、その石に触れた。
__途端。
これが、僕らの始まりだった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。