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第1話

一匁 一期一会
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2025/05/11 12:45 更新
昔から、周囲の人間とはどうにも波長が合わなかった。
自覚し始めたのはいつからだっけ?確か小学生の時くらいからだったと思う。
周りの人の頭上に、なぜか数字ようなものが浮かんで見えたのだ。鏡越しの自分の頭上にも、毎日見えている。周りに聞いてみたけど、どうやら見えているのは私だけだったらしい。最初は、何のことかさっぱりだった。
でも、そんなある日。小学生の間仲良くしてくれた雪姫ちゃんが、頭の上の数字が「1」になった翌日事故にあって死んでしまった。
私が見てきた数字は、人の余命日数を表しているものらしい。
そんな私に、両親は本当の話をしてくれた。私のご先祖様は死神であるって。
幼い私が怖がらないように隠し続けていたけど、こんなことが起こってしまった以上話さないとって。
死神というと、怖いイメージしかなかった。骸骨のお面をかぶっている、黒いマントの怪物みたいな。
しかしその話を聞いて何だか変な親近感がわいた。
両親は私に、他の人間には絶対そのことを言わないようにと言いつけた。私はいまだにその約束を守っている。
でもやはり人間と人外では考え方の違いもあるだろう。小学校では、私はそれとなくみんなに避けられていた。
皆が校庭に出て遊んでいるときも、誰からも誘われなかった。今になってみたら理由は、私が自分から話すことがあまりなかったから近寄りがたかったからだとわかる。
当時は子供ながらに腹を立てたものだけど、もう少し大人になったらそんなことはどうでもよくなった。
そして現在。私は今中学2年生である。来年には受験だし、そろそろ将来設計図を描かないといけない時期だ。
それはわかってるんだけど、私は今日も学校を休んでいる。
中学校に入ってから、私はいじめられるようになった。これに関しての理由はちょっとわからない。
私があからさまに誰とも接しないようにしているからだろうか?
そう、私は自分の力に他人を巻き込むまいと小学校高学年くらいから人付き合いを避けていた。
それに教室に入ると、皆の頭の上にたくさんの文字が浮かんできて頭が痛くなるし。
とにかく、ゴールデンウィーク明けの6月あたりから私はクラスのボス的な女子グループに目をつけられた。
最初のほうは軽くぶつかられるくらいだったけど、だんだんハードなものにエスカレートしていった。
私はこんなお遊びにいちいち心を痛めていたらかっこ悪いと自分に言い聞かせていたんだけど、ある日登校したら私の机の上に写真と菊の花が飾られているのを見たとき、嗚呼と思った。
私の死は皆にとってエンタメなんだ。雪姫ちゃんの事故であんなに悲しんでいた皆も、結局誰かの不幸で腹を満たす。人間って、そんなもんだ。
周りのクラスメイトは見ているだけだ。気持ちはわからなくもない。そりゃ誰だって巻き込まれたくないよね。
私が蹴られても殴られても、グループの下っ端はリーダーに合わせてけらけらと笑うだけ。ほんと、つまんないよ。
命というのは結構皮肉なもので、鏡に映る私よりもそいつらのほうが寿命が長かった。
世の中は理不尽、悪い人ばかりが得をするというのは本当のことのようだ。
誰も彼も、媚を売ってゴマをすって頭を下げている。人間関係ほど面倒くさいものはないよ。
いじめられていると両親に言ったら、意外なことに学校には行かなくてもいいと言ってくれた。
父にはどうしてもっと早く相談しなかったのかといわれたけど、まだ弱い子供だと思われたくなかったというのが事実だ。
だから今はその言葉に甘えているような状況だ。相変わらず先生からは「来た方がいい」って電話は来てるけど、それならまずいじめをなくす努力をしようねって話。
今日も私は、「学校を休むなら家のことをよろしく」という親との約束通りお使いに行っていた。
浮橋 夢
浮橋 夢
えっと…卵とキュウリと…
母が書いた買い物リストを確認しながら、スーパーを回っていく。
周りからの視線は痛い。皆に、「今は学校に行く時間でしょ?」と詰められている気がする。
敢えてそれに眼を瞑って、私は買い物かごに商品をどんどん入れていった。今日の夜ご飯はなんだろう…。
全ての品物がそろったので、私はレジで会計を済ませた。もうすっかり買い物には慣れた。
お釣りの小銭を財布に詰めて、私はレジ袋を肩にかけて家に向かった。どこかから子供の笑い声がする。
反射的に振り返ると、若そうなお母さんと小さな子供が笑いあいながら手をつないで歩いていた。

でも、その子の頭上には「10年」とあった。…10年したら、この子は死んでしまうのだ。

暖かい光景にほほえましくなると同時に、胸が締め付けられた。せめてこの能力さえなければ、死神でも全然かまわないのに。
目を背けて少し早足気味に歩く。少しでも早くこの現実から逃げてしまいたかった。
やがて、信号に差し掛かる。一息ついて、前をしっかりと向くと…驚愕した。
向こうからは、セーラー服を着たあのいじめっ子たちが歩いてきていたのだ。体が硬直する。
難解か私の靴に画びょうを入れてきたりした、幼稚な人たち。
そうやって見下していたはずなのに、なぜだか体が動かない。目がくらむ。
私がその場から逃げられずにいると、いじめっ子のうちの一人が私を発見した。
あ、終わった。オオカミににらみつけられた子ウサギのような気持ちだ。鼻の奥がツンと痛くなる。
そのいじめっ子の口角は、まるでいつか話に聞いた口裂け女のように大きく上がった。気味が悪い…
でも怖がるような顔だけはしたくなかった。そしたら負けることになってしまうから。いらないプライドがそれを許さなかった。
救いようのないクズ野郎
あれ~?浮橋さんじゃん。こんなとこでどうしたの~?
私______浮橋 夢は、地獄の再演を確信した。
人気のない路地裏にて、私は中学校にいた時と全く同じ所業を受けていた。
せっかく時の流れで消えていた痣が再発してしまう。また親に心配かけちゃうな。
蹴って、殴られる。だんだんと痛みを感じなくなってきた。
ふと、いつかのネットのページで見た無痛症についての話を思い出す。
無痛症の人は体の痛みを感じることが少ないから、自分で自分の身を壊してしまうって…
何だか意識が朦朧としてくる。最期に見る顔がこいつらとか、私絶対嫌なんだけど。
目に強制的に入ってくる彼女たちの「余命」も邪魔だ。
ふと、口を開けられる。目の前にはたばこの吸い殻。こ、こいつら何考えてるんだろう。
そんなもの、まともに口に入れられるわけがないじゃない!私はようやく抵抗を開始した。
足をいくらじたばたさせても、まるで彼女たちには効果がないみたい。
唇に不快な感触がして、反射的に目を閉じた。…誰か、助けてよ!

と、その時。バタバタと人が倒れるような音がした。私の口を固定していた手もほどける。
不思議な出来事に、思わず目を開ける。と同時に、お香のようないい匂いが鼻を抜けた。
目の前には女の人がいた。小麦色の髪をお団子に束ねていて、この例話の時代に不釣り合いな着物を着ている。
すごく美人だ。モデルさんのような小さい顔をしている。
しかし何より目を引くのは、頭に生えている角だ。何かのコスプレ、だろうか?にしては妙にリアルだな…
浮橋 夢
浮橋 夢
あ、あなたは…
やっと動くようになった口でその人に声をかけてみる。彼女は外国の人のような緑の目を細めて言った。
桐壺 千代
桐壺 千代
うちは千代。桐壺 千代だよ~。
全く、君みたいな若い人外をいじめる人間ってホント最低だよね~
お、思ったよりも緩い口調だなぁ…っていうかこの人、どうして私が人間じゃないって知ってるの!?
彼女の角のように、これといった身体的特徴があるわけじゃないのに…ちなみにこの人は人間?それとも…
ずっと座り込んだまま喋るのは失礼だと思って、勢い良く立ち上がる。と、急に痛覚が返ってきて傷口がズキズキとし始めた。咄嗟にそこを抑えると、女の人は少し考えたそぶりをしてから、私にある提案をした。
桐壺 千代
桐壺 千代
その傷手当てしたいからさぁ~、うちの店来ない~?運を分けてあげるよ~
運…?はよくわからなかったけれど、なぜか私は彼女を信用しきってしまっていて、うなづいてしまった。
桐壺 千代
桐壺 千代
はい、おしまい
浮橋 夢
浮橋 夢
え…!?もう傷が治ってる!?あ、ありがとうございます…
うん、やっぱりこの人人間じゃないかも。千代さんのお店で、私はそれを確認した。
私がお店に到着したとき、中には誰もいなかった。本当は何人かバイトがいるんだけど、今は買い出し中だとか。
店内の小さな物置みたいな部屋に二人で入って、千代さんは私がけがをしたところにそっと手を当てた。
その途端、まばゆい金色の光を私の周りを包んだ。有り得ないことに、痛みが少しづつ引いていく。
光が薄くなり、やがて消えたころ千代さんがようやく私の体から手を離すと…なんと私の傷は消えていたのだ。
勿論、普通の人間にこんなことができるはずがない。この人…一体どういう種類の人外なんだろう…?
両親から聞いたことがある。死神のほかにもたくさん種族があって、その末裔も私と同じように人生を歩んでいるって。…あれ?私はあることに気が付いた。
千代さんの頭上には、何も見えていない。寿命が見えないんだ。今までこんなことなかったのに…
近くにあった鏡をちらりと見てみると、私にはいつも通り文字が浮かんでいるけど彼女には…ない。
浮橋 夢
浮橋 夢
あの…千代さんってどんな種族なんですか?
思わず聞いてしまった。瞬間、千代さんの表情が少し曇ったような気がしたがどうやら勘違いだったみたい。
千代さんはへらりと笑って答えてくれた。
桐壺 千代
桐壺 千代
うちは鬼の中の一族だよ。勿論人を食ったりはしないけどね~。さっきの人間たちも眠らせただけだし
鬼かぁ…それなら頭の角も納得かもしれない。怖い鬼じゃなくて本当によかったよ…
さて、流石に相手に種族を聞いておいて自分が教えないのは礼儀にかなっていないだろう。
浮橋 夢
浮橋 夢
私は…死神です。とはいっても、まだ人の寿命しか見えないんですけど
そう言うと、千代さんは大きく目を見開いた。え、驚く要素なんてあったかな?
疑問に思っていると、千代さんは私の肩を突然強くつかんできた。
桐壺 千代
桐壺 千代
あんた…死神なの?「まだ」ってことは、いずれ…
浮橋 夢
浮橋 夢
あ、はい…もう少し力が付いたら、人の命を刈りとれるかもしれません。母がそうなんです…
でも、こんな力使うことないですよね?
どうしてこんなに食い気味なんだろう。死神って、そこまで特別な存在じゃないと思ってたんだけど…
千代さんは遠くの方を見ると、私からそっと手を退けた。
桐壺 千代
桐壺 千代
…殺してほしい、人がいるんだ
浮橋 夢
浮橋 夢
え?
何を言っているのかわからなかったし、声のトーンが変わったからびっくりしていると、どこからかガラガラと音が聞こえた。扉が開いた音…もしかして、バイトの人たちが帰ってきたのかな?
私の予感は的中したようで、その方向から人の声がうっすらと聞き取れた。
????
千代さ~ん、ただいま!お願いされてた招き猫の置物買ってきたよ~
女の子の声、かな?私はそそくさと荷物をまとめて千代さんに礼をした。いつまでもここに長居していたら迷惑だろう。しかし千代さんにはそれが通じなかったみたいだ。
千代さんは今度は私の腕をつかんで玄関のほうに向かいながら、「今行く~」と返事をした。
浮橋 夢
浮橋 夢
って!!ちょっと、何してるんですか!私帰った方がいいんじゃ…
桐壺 千代
桐壺 千代
変な気は遣わなくていいって~。皆に挨拶していきなよ~
慌てふためいたまま、いつの間にか私はバイトの人たちの前に連れてこられてしまった。うぅ、みんな私を見てる…
バイトの人たちは人間なのかな?それとも違うのかな?
千代さんが、何事も起こっていなかったかのように自然にアルバイトの人たちへ私を紹介する。
私が死神の血を受け継いでいることと、私が「依頼人」ではなくてただの通りすがりの人物だっていうこと。
依頼人…って、なんだろう?この店で言うお客さんのことか何かかな。
シーンとあたりが静まる。うぅ、気まずい。
しばらくの沈黙ののち、それを打ち破るように飴細工のような赤くて綺麗な目をした男の子が口を開いた。
絵合 都
絵合 都
はじめまして~!ボクは吸血鬼で、絵合 都っていいます!こっちの人は伏見 御法くん!
御法くんと呼ばれたその人は、つけていた眼鏡を指で押し上げて一言「うん」とだけ言った。
喋ることが苦手なのかな…というか、首のあたりにいっぱい絆創膏が付いててちょっと痛々しいことになってるんだけど…怪我?
困っている私に、ちょうど身長が同じくらいの女の子が説明してくれた。たぶんさっきの声の主だろう。
胡蝶 笑顔
胡蝶 笑顔
あたしは胡蝶 笑顔!我謝髑髏?の末裔みたい。都は吸血鬼だから、血を主食にしてるんだよ。
人間っぽい味の血しか舌が受け付けないみたいで、なんか魔力がない御法が都のご飯になってる状況。
ほら、吸血鬼って血を吸うとき皮膚噛むじゃん?それであんなに傷が出来てるの。
…にしても御法って、ほんと都のこと好きだよね~
伏見 御法
伏見 御法
へ、変な事言うなよ…
御法くんが少し顔を赤くする。説明からして、この人は人間らしい。
ちなみに今の私の目にも、御法くんの余命しか映っていない。数字の桁も私と同じくらいだ。
ってことは…人間じゃない人の余命は私には見えないってこと?その代わり、自分と人間のは見えるとか。
考え込んでいると、すぐ近くで猫の鳴き声が聞こえた。と同時に、足のあたりにふわふわした感触が走る。
そっとかがむと、そこには可愛い黒猫がいた。犬より猫派の私は、そっと手を伸ばして撫でてみる。この猫、すっごく人懐っこいな。
そう思っていると、雲色の髪の美女に顔を覗き込まれた。
夕霧 葉
夕霧 葉
可愛いでしょ?私の猫。武蔵って名前なんだけど
浮橋 夢
浮橋 夢
わぁっ、勝手に触ってしまってすみません…
夕霧 葉
夕霧 葉
ううん、いいの。私は夕霧 葉。どんな種族かは…見たらわかるよね
その言葉の通りだ。頭には帽子。その特徴的な形は、彼女が魔女であることを特定するには十分だった。
というか、千代さんの考えていることがまるで分からない。この人たちに私を紹介して何になるんだろうか?
胡蝶 笑顔
胡蝶 笑顔
あのさあのさ、君なんて名前なの?
笑顔さんに興味深そうに聞かれて、私は答えた。そういえば、千代さんにも伝えてなかったな。
浮橋 夢
浮橋 夢
浮橋 夢っていいます。よろしくお願いします…
一応深く礼をしておく。自己紹介なんて中学1年生の入学式以来かもしれないな。
胡蝶 笑顔
胡蝶 笑顔
分かった!!じゃあ…夢って呼ぶね!
浮橋 夢
浮橋 夢
えっ…な、名前呼びですか!?
家族以外の人に下の名前で呼ばれるなんて、ちょっとくすぐったい。特に嫌な気がするわけではないけど…
と、唐突にお店のベルが鳴った。昭和の黒電話のような音だ。千代さんのまなざしが少し真面目になった。
桐壺 千代
桐壺 千代
皆~、依頼人さんだよ~。人間でも人外でもちゃんと解決しよう~
胡蝶 笑顔
胡蝶 笑顔
はーいっ!!
絵合 都
絵合 都
分かりました!
夕霧 葉
夕霧 葉
うん、わかった
伏見 御法
伏見 御法
はいはい…
千代さんの声に、皆が口々に返事をする。依頼人って…今からやってくるってこと?
物陰に隠れようとする私に、千代さんが柔らかく声をかけてくれる。
桐壺 千代
桐壺 千代
今から来るのが依頼人。まぁ、見ていったらいいんじゃないかな~。それにできれば夢に手伝ってもらいたいんだよねぇ~
そう言って、千代さんはいたずらっ子みたいな怪しげな笑みを浮かべた。
口からは鋭い牙が覗いていて、夏の日差しに照らされていた。
はい、6060文字達成しました☆主は阿呆です!!
時間がないのに主の声のみでお送りしますね…ディストとかヒストとか好きな方々すみません…
人外がいっぱい出てくる小説を書きたいとネタを長い間温めてまいりました。その結果、出てくるキャラクターが72人から32人に絞られました!!自分に拍手を送りたい。
ってか、今回の小説他のと比べてだいぶ読みやすくないですか?(セリフが多いから)
主人公の夢ちゃん、歴代の自称:人間小説の中で一番メンタルつよい主人公じゃないですか…?
真央ちゃんと深雪ちゃんと夢ちゃんでメンタル勝負したら絶対一位に輝くと思います。
そして恒例の「1話から始まる唐突なBL」。タグつけてるんで多分大丈夫ですが…ちゃんと百合も出てくるので安心してください()
テスト前にこんな変な小説書いてる人間多分私だけだと思います。オリジナリティって素敵だよね
ではそろそろ終わります。6500文字達成してしまうので…ではまた今世で~!
鏡花水月をこれからよろしくお願いいたします!!

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