ふくらが部屋に戻ると、そこにいたのは河村だけだった。
河村は、ふくらがスマホを少し持ち上げたのを見て、無言で部屋を出る。
それからこっそりと消音結界を張っておいた。
ふくらは河村が部屋を出たことを確認すると、SPSの同期で今はCatastropheに潜入している人物に電話をかける。
その人物は3コールほどで電話に出た。
2人はSPSに入った時期が同じではあるが、警察としてのキャリアや年齢ではふくらの方が1年だけ先輩だ。
もっとも、彼は浪人を経験しているため社会的には更に後輩にあたるのだが、特例としてふくらの翌年に警察に入ってきた。
そのため、彼はふくらに対して敬語を使っている。
ふくらはしばらくの沈黙の後、口を開いた。
それから彼は、彼が抱いた疑問を同期にぶつける。
同期はそれを無言で聞いていた。
同期からの頼もしい言葉に、ふくらは安堵したように頷く。
ふくらの同期──シンが電話口で照れくさそうにしている様子が目に浮かぶ。
ふくらはこの同期をイジるのが好きだった。
ふくらはふふっ、と笑みをこぼす。
1番の頼み事を終えたふくらは満足げに電話を切り、ベッドに寝転がった。
タイミングを見計らっていたのか、すぐに河村が入ってくる。
ふくらは河村の方を見て無言で頷く。
河村はそんなふくらの隣に寝転がり、2人とも目を閉じた。
山上と林は、自分たちの部屋に戻っていた。
謎の男に出会った林は、その男の威圧感から無意識に起こった震えがまだ止まっていなかった。
そんな林の様子を見た山上は、思い出させないようにその話には敢えて触れず、ただ寄り添っている。
それとともに、ここまで神経を衰弱させるほどの威圧感だったということも察した。
山上はそれに頷いて応える。
林は、今はその優しさにただ甘えることにした。











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。