翌朝 、ラテは制服に袖を通しながら 、
わずかな違和感を覚えていた 。
布の感触も 、サイズも 、昨日までと変わらない 。
それなのに 、身体の内側だけが
少し 先へ進んでしまったような感覚があった 。
鍵は 、胸の内ポケットに入れていた 。
触れれば 確かにそこにあると分かる重み 。
けれど誰にも見えず 、誰にも知られない 。
── 秘密とは 、こういう形をしているのか 。
学校へ向かう通路は 、
地下都市特有の直線で構成されていた 。
曲線は少なく 、
視界は常に計算されていて 迷う余地はない 。
天井には 疑似的な昼光が流れ 、
時間の感覚さえ 管理されているよう 。
ラテは 、その光を見上げなかった 。
見上げる癖は 、庭園にだけ残しておきたかった 。
校舎は 街の中央区画に近い場所にある 。
教育施設というより 、
整然とした保管庫のような建物だった 。
背後から声をかけられ 、少女は振り向く 。
メメントモリだった 。
整えられた髪 、きちんと着こなした制服 。
周囲と同じはずなのに 、
どこか 浮いている ように見える 。
二人は並んで歩き出す 。
廊下には 生徒たちの足音と 、
一定の間隔で鳴るチャイム 。
壁面には 、標語が並んでいた 。
" 秩序は自由を守る "
" 安定は幸福の基盤である "
" 過度な疑問は 、心を疲弊させる "
ラテは 、視線を逸らした 。
教室に入ると 、
天井一面に映し出された空が目に入る 。
庭で見るものと まったく同じ青 。
教師が 、感情の起伏を抑えた声で言った 。
黒板に映し出されたのは 、街の成り立ちだった 。
記録に残る気候の変動 、資源の偏在 。
人々の生活が 、安定を失っていた時代 。
そして 、現在の都市構造へ至るまでの過程 。
教師の声は 、疑いを許さない 。
ラテは ノートをとる指が止まるのを感じた 。
" 人らしく "
庭師の言葉が 、胸の奥で反響する 。
── 怖かった 。
でも … それ以上に 、生きている感じがした 。
教師が 、教室を見渡す 。
数秒の沈黙 。
やがて 、数人の生徒が
教科書どおりの答えを口にする 。
教師は満足そうに頷いた 。
メメントモリと 、視線が合う 。
ほんの一瞬 。
けれど 、二人は 同じことを考えていると分かる 。
── それでも 、
見てはいけない理由にはならない 。
授業の終わり 、教師は 事務的に付け加えた 。
ラテの心臓が 、強く打った 。
揺らぎは 隠され始めている 。
昼休み 、二人は校舎裏の小さな中庭に出た 。
ここにも空はある 。
けれど 、庭よりも低く 、近く 、逃げ場がない 。
メメントモリが 、声を潜める 。
ラテは 鍵の感触を確かめる 。
メメントモリは 空を見上げ 、すぐに目を伏せた 。
その言葉に ラテは頷いた 。
学校は 、知識を与える場所だ 。
同時に 、疑問を持たないよう 、
訓練をする場所でもある 。
── ここにいる限り 、何も変わらない 。
チャイムが鳴る 。
二人は立ち上がり 、教室へ戻る 。
けれどラテは 、確かに感じていた 。
この場所で 、
この管理された青の下で 、
彼女たちはもう 、従順な生徒ではいられない 。
学校という箱の中で 、
小さな亀裂が 、静かに広がり始めていた 。
その亀裂は やがて庭へ 、街へ 。
そして 、空そのものへと伸びていく 。
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mmさんの口調が少し変わってるの気づきましたか !
敬語に変更しました 🙌🏻
それに伴い 、003 の口調も敬語に変更してあります 🍀
メメさんは 敬語が抜けない人 … って解釈で大丈夫です .. ! !












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。