雨上がりのオフィス街。入社3年目の営業部社員、佐藤悠真は、心の底から今日という日を呪っていた。理由は一つ――新しい直属の上司となった、営業部課長・城崎蓮である。
「佐藤、また書類にミスがあるな。俺の前に出すなら完璧にしてからにしろ。」
低く冷たい声が、背筋を凍らせる。城崎は完璧主義で、自分にも他人にも容赦がない。社内では“ドS課長”と呼ばれ、誰も逆らえない存在だった。悠真にとっては、まさに天敵だ。
(なんで俺が、よりによってこんな奴の下に……!)
その日も、提出した営業報告書に重箱の隅をつつくような指摘をされ、悠真は机を叩きたくなる衝動を必死で抑えていた。城崎は涼しい顔で書類を机に置き、にやりと笑う。
「……ふ、顔に出てるぞ。悔しいか?」
「……っ、別に。」
悠真は歯を食いしばる。城崎の目は、まるで挑発して楽しんでいるかのようだった。ドS課長――その呼び名は伊達じゃない。
だが、その夜。残業を終えて帰ろうとした悠真は、偶然、ビルの非常階段で煙草を吸う城崎の姿を見つけた。月明かりに照らされる横顔は、昼間の冷酷さとは違い、どこか寂しげだ。
悠真は思わず足を止める。
「……何だ、まだいたのか。覗き見か?」
「ち、違います!」
振り向いた城崎の目は、鋭いのに不思議と惹きつけられるものがあった。その瞬間、悠真の胸に小さな違和感が芽生える――嫌悪だけではない、何か別の感情。
それが後に、禁断の恋へと変わることを、まだ悠真は知らない。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。