第7話

7.胸の奥の痛み
9
2026/06/13 11:10 更新
翌週の朝、営業部に新入社員が配属された。明るい雰囲気をまとった青年、藤原奏多は、人懐っこい笑顔で自己紹介をする。

「藤原奏多です! 前職は雑貨メーカーで営業をしていました。よろしくお願いします!」

その声に、佐藤は目を見開いた。

「……奏多……?」

「えっ、悠真!? うっそ、久しぶり!」

二人は思わず笑顔を交わした。学生時代に付き合っていた元彼との再会。自然消滅しただけに、気まずさよりも懐かしさが勝っていた。

「まさか同じ会社に入るとは思わなかったな。」

「ほんとだよ。……相変わらずだな、悠真。」

佐藤と藤原が肩をすくめて笑う。その様子を、離れた席で城崎は無言で見ていた。

(……佐藤、あんな顔するんだな。)

昼休み、コピー機の前で書類を整えていると、二人の声がふと耳に入る。

「最後に会ったのって、卒業の時だよな。」

「ああ……自然に疎遠になっちゃったけど。」

「でも、こうしてまた会えるとは思わなかったよ。元カレと同じ会社なんてさ。」

思わず佐藤が小さく吹き出した。

「……言うなよ、それ。」

城崎の手が止まる。

(……元カレ……? 佐藤の……)

胸の奥がずきりと痛んだ。資料を握る指先に自然と力がこもる。

午後、オフィスに戻れば、佐藤と藤原が並んで資料を確認している。二人の笑い声が、なぜか遠く感じた。

(……あいつが、佐藤の昔の……)

無理やり視線を逸らし、城崎は平静を装う。しかし胸の奥には、悔しさと焦りが静かに渦巻いていた。

夜、オフィスに一人残った城崎は、窓の外の街灯りを見つめながら深く息を吐く。耳の奥に残るのは、昼間の笑い声。

(……くそ……なんで、こんなに……)

初めての痛みが、胸の奥で静かに広がっていった。

プリ小説オーディオドラマ