翌週の朝、営業部に新入社員が配属された。明るい雰囲気をまとった青年、藤原奏多は、人懐っこい笑顔で自己紹介をする。
「藤原奏多です! 前職は雑貨メーカーで営業をしていました。よろしくお願いします!」
その声に、佐藤は目を見開いた。
「……奏多……?」
「えっ、悠真!? うっそ、久しぶり!」
二人は思わず笑顔を交わした。学生時代に付き合っていた元彼との再会。自然消滅しただけに、気まずさよりも懐かしさが勝っていた。
「まさか同じ会社に入るとは思わなかったな。」
「ほんとだよ。……相変わらずだな、悠真。」
佐藤と藤原が肩をすくめて笑う。その様子を、離れた席で城崎は無言で見ていた。
(……佐藤、あんな顔するんだな。)
昼休み、コピー機の前で書類を整えていると、二人の声がふと耳に入る。
「最後に会ったのって、卒業の時だよな。」
「ああ……自然に疎遠になっちゃったけど。」
「でも、こうしてまた会えるとは思わなかったよ。元カレと同じ会社なんてさ。」
思わず佐藤が小さく吹き出した。
「……言うなよ、それ。」
城崎の手が止まる。
(……元カレ……? 佐藤の……)
胸の奥がずきりと痛んだ。資料を握る指先に自然と力がこもる。
午後、オフィスに戻れば、佐藤と藤原が並んで資料を確認している。二人の笑い声が、なぜか遠く感じた。
(……あいつが、佐藤の昔の……)
無理やり視線を逸らし、城崎は平静を装う。しかし胸の奥には、悔しさと焦りが静かに渦巻いていた。
夜、オフィスに一人残った城崎は、窓の外の街灯りを見つめながら深く息を吐く。耳の奥に残るのは、昼間の笑い声。
(……くそ……なんで、こんなに……)
初めての痛みが、胸の奥で静かに広がっていった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!