キャラ崩壊注意 上下構成
魔法局には、専門分野を担当する局がいくつもある。
その中には、研究を主とする局もあった。
ある日、その局の一人が、とある薬品を完成させた。
「記憶が目の前の人物と会う前に戻る」薬である。
誰が得するんだ、という完全に自己満の域のものであるが、研究局にはそんなものを生み出す頭と、変人魂がある者がいるのだ。
そう思って、早足になりながらも丁寧に運んでいた時のことだった。
目の前から、オーターとあなたがやってきた。
挨拶をする余裕はないが、せめてお辞儀だけでもしようと、局員は動いた……その時だった。
床で滑って、転んだのだ。
軽くしか蓋をしていなかったために、簡単に外れる。
溢れた中身は、全てあなた にかかった。
まさか毒じゃないだろうな、とオーターは睨む。
あなたの目の前に居る相手……と言えば、オーターだ。
つまり、魔法局に来る前の記憶が消える。
毒じゃなかった事に安心するが、今でも状況はかなり危うい。
魔法局に来るまでの記憶がない……村を滅ぼしたところで記憶が止まっていて、パニック状態なはずだ。
そんな中で知らない場所……しかも謎に威圧感のあるオーターが居たら、泣かれかねない。
厄介な事になる前に、最初のあの状況を作らなねば。
そう思ったが、既に遅かった。
周りを見渡している。
オーターの顔を見ると、すぐに叫んだ。
オーターはまだ何もしていない……運ぼうとして近付いただけである。
駄目だ、怯えられてまともに話が通じない。
あなたと接する事により、少しは子供に懐かれやすく……なんて思っていたが、ただ単にあなたが懐いただけ、ということが分かる。
事の発端の局員に声をかける。
研究しかしていなかったせいで、子供の扱い方は知らない。
だが、オーターよりかは懐かれやすい自信があった。
頑張って言うが、明らかに棒読みだったためか全く信用されない。
というか見た目からして絶対怖い、という自信があなたにはあった。
場は硬直状態。
あなたが二人を睨む、という形になっていた。
そこで、たまたまライオが通りかかる。
床に座り込んで目を腫らしているあなたを、妙な威圧感を放つオーターが見下ろしている。
確かに、誤解を招きかねない光景だった。
ライオは信用できる、と子供心に思ったのか、オーター達を指差してそういった。
ただ単に声を掛けようとしただけで変人扱いである。
今までの態度からの一変に、深いショックを受けた。
ライオは心の中でほんの少ししゅん、としたオーターを笑っている。
状況的には、変質者に近い。
オーターよりかは子供の対応に慣れているライオである。
あなたに話しかけた。
先程より落ち着いていて、怯える様子もない。
自分よりもライオに懐いているのを見て、落ち込む。
あなたは少し悩んでから言う。
適切な言葉を選んでいるようだった。
突然の毒舌に、オーターのメンタルは削られる。
眼鏡のレンズにも、ヒビが入っていた。
オーターと一緒にすると、あなたが怯えて仕方ないので、渋々ライオに引き渡す。
再び会ったのは、それから数時間後のことだった。













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!