第48話

番外編3
1,021
2024/04/21 13:39 更新
あなた
食べてみたい、スイーツ?
とある日の午後、あなたはそう言った。
モナクとの会話で、スイーツの話になっていたのだ。
з-☆ρ༎ຶོ(グルメガイドとか、菓子の作り方とか見てるから、なんかそういうのがあるのかなーって思って。)
すぐ側で仕事をしているオーターも、会話を聞いていた。
何かあるなら、買ってこよう、という顔だ。
モナクも、それに気付いた上で聞く。
ˊ̱˂˃ψψ(流行りのやつとかあるじゃん。カヌレとかさ。)
あなた
あー
あなたは考える……食べてみたいスイーツ?
そんなの無限に出てくる。これがいちばん、というのは決められない。

強いて挙げるとすれば……
あなた
……サントノーレ、かなあ。
そう言ってみる。だが、反応はなかった。
(サント……)
オーター
(ノー……レ?)
何だそれは、とオーターとモナクは思った。
新種の呪文にしか聞こえない。
∧(Θ(ほ、ほかには?)
あなた
んー、フラン、とか?
フラン……‼︎‼︎
分からなすぎて、ついに心の中で叫び始める。
今度は、人の名前かと思った。誰だ其奴、フランって。
オーター
(実在するスイーツ、か……?)
オーターは首を傾げた。
目の前の書類よりも、言っている意味が分からない。
 ・∇・(そんなのあるの?)
あなた
前に、局の人にスイーツガイドを見せてもらった事があるんだけど……それにのってたんだよね。
あなた
この辺に店があるはずなんだけど、行ったことないから分かんない……
オーターは、その声を聞きながら立ち上がる。
もしかしたら、他の神覚者なら知っているかもしれない。
聞いてみよう。
そう決意して、部屋から出た……



カルド
スイーツの名前が分からない?
幸運な事に、いちばんそういうのに詳しそうなカルドがいた。
話題に出してみる。
オーター
あなたが言っていたんだが、呪文みたいな名前をしていてな……
カルド
どんな名前?
オーターは、一文字一文字を確かめながら言う。
すると、カルドは首を傾げる。
カルド
んー聞いたことはあるけど、どんなものかはちょっと分からないなあ。
それってどこに載ってたの、と付け加える。
スイーツガイドらしい、と答えると、
カルド
あれ発行部数少ないんだよね……
と言った。カルドは欲しかったが、買えなかったらしい。
知ってそうだと思ったが、見当違いだったようだ。
カルド
流行りの、っていう訳でもなさそうだし……そもそも全てのスイーツ知ってる訳じゃないからね?
オーターの反応を見て察したのか、カルドはそう言った。
オーター
人材活用と、そういう知識だけが取り柄なのに?
カルド
だけは失礼じゃない?
オーターとしては、刺身にハチミツをかけるような馬鹿舌の持ち主に、敬意を払うつもりはない。
???
そのサントノーレ、というものは分かりませんが
たまたま通りかかったソフィナが、口を挟む。
ソフィナ
フランなら知ってますよ。通りに店があります。
そういうの、知ってるんだ。
カルドはそう思ったが、怒られそうなので口には出さない。
カルド
どういう物なの?
ソフィナ
カスタードクリームを、タルト生地に流し込んだような物ですね。
それくらいなら作れそうだな……とオーターは思った。
何回か料理をしているうちに、腕も上がっている。
それも、簡単なクッキーなら焼けるくらいにだ。
ソフィナ
突然そういうものに目覚めたのですか?
あなたのことを知らないも同然のソフィナは、そう聞いた。
食にこだわりが何もなかったオーターが、突然そんなことを聞いてくるようになったら、誰でも突っ込みたくなるだろう。
カルド
ああ……実はね、オーター今……
面白がったカルドは、今までの逸話も交えて説明する。
ソフィナ
成程……前に女の子と歩いているのを見て、少女誘拐……またはそういう趣味があるのかと思っていました。
ソフィナ
一時期、ロリコン説も囁かれていましたし。
モナク事件後以降、局で広まったものだ。
オーターからすると、初耳である。
神覚者がそれで大丈夫なのか、と思っていたソフィナだったが、どうやら違うらしい。謎が解けて、安心していた。
カルド
ちなみにその子、古語に精通してるよ。
カルド
あと本好き。
古語と本という言葉に反応する。
ソフィナ
禁書の類も?
カルド
多分だけど、文字があれば何でも喜ぶ。
活字の時点で無理、という人が多い中で、そういう人材は貴重だった。
それと、ただ単にここまでオーターが世話を焼く子が気になる。
ソフィナ
……今度、お菓子でも持って会いに行きます。食べれない物はありますか?
とりあえず会ってみよう、と興味を示す。
オーター
くどい物はあまり興味を示さないみたいです。
生クリームがたっぷり、みたいな物は途中で飽きるらしい。
あなたの周りには男性が多いので、女性の知り合いが出来ることは良いことだと思う……流石に、元女性のメシシスはカウントできない。
カルド
でー、そのサントノーレってやつは誰か知らないのかな?
ソフィナ
部下の方たちに聞いてみればよかったのでは。
オーター
……私が仮に話しかけたとして、怯えられて終わりでしょう。
普段の会話が業務連絡しかないオーターが、いきなり聞いてきたら確かに怖い。
聞けないのも当然だろう。




???
ん?




そこで、レナトスがやってくる。
レナトス
お前ら何話してんだ、こんな時間に集まって。
そう言って、近付いてきた。
部下ともそれなりにコミュニケーションを取る人だ。何か聞いているかもしれない。
オーター
レナトス
レナトス
三人で近付く。正確には、圧をかける。
オーター
サントノーレ、というスイーツは知っていますか?
するとm何か考えるようなそぶりを見せる。
レナトス
あれか、パイの上にちっちゃいシュークリームのっけたやつ。
そう言われても、実物を誰も知らないのだから分からない。
カルドは、知ってるんだ、と返す。
レナトス
前、ウチの局の奴が食べに行ったらしく、その話をしてた。
確証はどこにもないので、多分と付け加える。
ソフィナ
……こうなったら調べましょう。
レナトス
どんな本に載ってたのかは知ってるのか?
カルド
スイーツガイド、という本だけど、あんま出回ってないから難しいねえ……
四人の横を、たまに局員が通り過ぎる。
頭を抱えた神覚者達を見て、何について話しているんだ、という顔をしていた。
その中の一人が、冊子を持って近付いてきた。
魔法局の人
あの……お話中すみません……
レナトス
どうかしたか?
そう言われると、その冊子を此方に差し出した。
魔法局の人
スイーツガイド、ってもしかしてこれですか……?
それには、スイーツガイド、と書かれている。
しかも最新版だ。これぞ求めていた物である。
ソフィナ
何故これを……?
魔法局の人
丁度今日入ってきた本……だと思われます。
実際には局員の私物だが、バレると怒られそうなので誤魔化す。
カルド
ナイス。ちょっと借りて良い?
私物ということを承知の上で、カルドはそう聞く。
勿論です、と答えた。
冊子の周りに、四人は集まる。
何とも異様な光景だった。
レナトス
これじゃね?
写真が貼られたページ……上には、「王冠をイメージした菓子、サントノーレ」と書かれている。
レナトスの言った通り、パイの上に小さなシュークリームが三つほど載っている。
周りにはクリームもあった。
カルド
結構アレンジが利くやつみたいだね。
ソフィナ
店はフランのところのすぐ近くにあるようですよ。
レナトス
でも一日三十個限定だな。
口々にそう言う。
この時間から行っても、買える見込みはなかった。
オーター
明日半休を取りますか……
午前中に休みを取って、朝から並んでいけば買えるはずだ。
外で仕事、とでも言っておけばあなたも納得するだろう。
ありがとう、とカルドが局員に冊子を返す。
場を解散した後、オーターは即届出を提出しに行った。





そして翌日。
オーターは死人の目をしていた。
まさか、ここまで混むとは思っていなかったのである。
しかも、殆ど女性。その中に入るのは地獄だ。

あなたのため……と何とか耐えたが、五徹目並のきつさだ。
とりあえずあなたの分と、一応カルドの分の確保には成功。フランは難なく買えた。
オーター
戻りました。
部屋に入る。
すると、あなたは椅子から立ち上がり、オーターを出迎えた。
あなた
どこに行ってたんですか?
仕事、と言ったはずだが、そう聞いてきた。
あなた
ライオさんから聞きました、オーターさんきょうは午前は休みをとってるって。
届出を提出したが、理由欄には「私事」としか書いていない。
事情を説明しておけばよかった、と後悔する。
モナクは察しているのか、オーターの背後へと回った。
^^ε=ε=(まあね、神覚者ってやつも色々あるんでしょ。)
┌┘(例えばあなたのためにスイーツを買いに行くとか。)
背中を叩かれる。はやく言ってやれよ、とでも伝えているようだった。
紙袋をあなたに差し出す。
オーター
昨日話していたスイーツを買ってきただけですよ。
あなたはがさごそと紙袋を丁寧に漁る。
あなた
本物だ……
あなた
こっ、このために?
数量限定の人気商品、開店前から並ばないと買えない。
貴重な休みを、これに使ってしまって良かったのか。
オーター
他の用事はたまたま早く終わって、近くにあっただけです。
他の用事もあったが、買うのが第一の目的であった。
オーター
最近は訓練を頑張っていますし、たまにはいいでしょう。
オーター
温かいうちに食べますよ。
あなたは紅茶を用意し始める。
まだ覚えたてだ。準備する手が拙い。
食べる予定のないオーターだったが、一応カルド用の物を食べる事にする。
長時間並んだのだから、このくらいなら許されるだろう。
あなた
おいしすぎる……
甘い物に特段興味のないオーターだったが、あなたの笑顔が見れるのなら、たまにはいいと感じられた。
しかし、開店前から長蛇の列に混ざるのはもうこりごりである。

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