「研磨ー起きろー!!」
聞き慣れた五月蝿い声に目を覚ました研磨は、まだ完全に開ききらない目をうっすらと開ける。
五月蝿い声の主は同じバレー部の山本猛虎だった
連日試合のため泊まっていた「ホテルまたたび」。雑魚寝の大広間入口から山本がそう声をかけ襖を閉める
だがその瞬間、研磨は再び眠りにつこうと目を閉じた
研磨の寝起きの悪さを知っている山本が直ぐに感づいて再び襖を開けて叫ぶ
あまりの大声に驚いた研磨は二度寝を諦めて起きることにした
食堂へ行くために階段を降りていく山本の足音を聞きながら周りを見渡すと自分以外の布団が綺麗に畳まれていることに気づく
ボサボサ頭のまま寝起きの固まったからだを起こすように伸びをして立ち上がり、同じように布団を畳んで携帯を手に大広間を出た
階段を降り始めたところでメールを知らせる通知がなる
日向からだった
『おはよう!!いよいよだな!!たのしみだな!!!』
文字だけでも気合いと元気が伝わってくるメールに研磨は小さく笑った
幼なじみの黒尾の声に顔を向ける。階段下でまるで研磨を待っていたように立っていた
面倒見の良い黒尾はなかなか起きてこない研磨の様子を見に行くところだったのかもしれない
幼なじみの気軽さで研磨は面白そうに言う
日向は研磨にとって初めて試合した時から予測不可能の存在だ。初めて見る能力は研磨の攻略心をくすぐり、真っ直ぐで裏表無い性格は心地よく、研磨にしては珍しく自然に気の置けない友人になった
メールの返信を打っている研磨を見ながら黒尾は少し考えて口を開く
含みを持たせたような声色に研磨は顔を上げる
何を当たり前のことを言っているのだろうとワスマに眉を寄せる研磨に、黒尾はなおも続ける
日向が自分に勝ちに来る。試合以上の意味を持つそれに研磨は気づきもせず、友人へのメールを送った
『そうだね』
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。