狙撃手が放った銃弾は、『狂犬』の足元の石造りの地面を僅かに破壊した。概ね期待通りの方向へ進んでいる。
通信機越しにそう声が聞こえた。『暗』はナイフを銃弾のように扱う、『刹那』とは似ても似つかない特技を持っている。
煉瓦造りの屋根の影に身を隠し、腰を下ろす。スナイパーライフルをリュックサックに入れて、一足先に休憩することにした。
それなりに疲労が溜まっていた。『刹那』自身、銃を扱うようになって、この危険な仕事に身を投じてから僅か4年程度しか経っていなかった。『嵐星』や『紬星』が先輩的立ち位置になるのはもちろん、『昴』とも同期というような関係性だった。
『昴』が『刹那』の元へ駆け寄ってくる。後ろを見ると、『天』さんがこちらを不安そうな瞳で見つめていた。身長的に、年齢は『昴』と同じくらいだろうか。
屋根の上を散歩するのはこの人くらいだろう。この人にとって、屋根に登るということは遊具の危ないところに登るような感覚なのだと思う。そういえば、精神年齢はまだ小学生程度だったか。
『天』さんはしどろもどろに答えた。人見知りとはいえ会話は問題なくできるようなので、昔の『昴』よりは断然マシだと思ってしまう。
『天』は『昴』に対して少し声を張る。図星のようだ。
『刹那』は『天』の目を見てそうアドバイスをする。『天』は目を合わせないように目を逸らしたが、その表情は緩んでいた。
それにすかさず食いつく『昴』。人のこと言えないだろと思いながら、幼いふたりの会話を聞いて疲れを癒した。
『天』は自身の唇に人差し指を当てて静かにするように促した。お口チャックとは少し違う気もするが、どちらにせよ意味はほとんど同じなので気にとめないことにした。
ふたりと会話している内に任務の内容が頭から飛んでいっていた。そういえば、あれ以降誰からも連絡が来ていない。
こうしちゃいられない、と『刹那』はその場から立ち上がり、銃や諸々の荷物が入ったリュックサックを背負う。
『天』は控えめな返事を、『昴』は幼稚園児のような元気な返事をした。『刹那』を先頭に、その3人は昼下がりの街の外れを掛けていく。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。