ステージのライトは、いつも通り眩しかった
音も、歓声も、何も変わらない
イヤモニ越しに声が聞こえる
返事をする
足を一歩、前に出す
それだけの動作なのに、少しだけ重い
でも
止まらない
止まれない
音が鳴る
身体が動く
笑う
いつも通りに
完璧に
でも
ふとした瞬間に、思う
__今、見てる?
客席のどこかを、無意識に探してしまう
いないって、分かってるのに
それでも
ほんの少しだけ、期待してしまう
一瞬だけ、呼吸が浅くなる
でも
すぐに戻す
プロだから
崩れない
ステージが終わる
拍手
歓声
深く頭を下げる
顔を上げるときには、ちゃんと笑っている
楽屋に戻る
ドアが閉まった瞬間
音が、途切れるように遠くなる
息を吐く
椅子に座る
静か
やっと、一人になる
ぽつりと出る
当たり前のこと
でも
言葉にしないと、どこかでまだ探してしまう
スマホを取り出す
トーク画面
変わっていない
最後のまま
少しだけ笑う
前は、それが怖かった
でも今は
少しだけ、違う
あの日のことを思い出す
倒れ込んできた重さ
掴んだ手
離さなかった温度
強く握り返され手
あれが、最後
そう思うと
胸が、じわっと痛む
でも
それだけじゃない
あの日までの時間
全部が、ちゃんと残っている
小さく呟く
こんなに残るなら
最初から出会わなければよかった、って
少しだけ思う
でも
すぐに、否定する
首を振る
ちゃんと、言い直す
それが、本音だから
そのあと
一人で、外に出る
足が向かうのは、決まっている
中庭
ベンチ
そこに座る
隣は、空いている
でも
前ほど、怖くない
小さく呟く
少しだけ空を見る
ステージのこと
見てないって分かってるのに
報告したくなる
少し笑う
あのときみたいに
崩れそうでも、立ってる
誰もいないのに、少しだけ得意げに言う
そのあと
静かになる
風が、通る
少しだけ声が弱くなる
胸に手を当てる
消えてない
むしろ
ここにある
ずっと
息を吸う
ゆっくり、吐く
自分に言う
少しだけ間を置く
本音を、足す
それでいいと思う
全部なくなるより
残ってる方がいい
最後に、もう一度だけ呼ぶ
返事は、ない
でも
もう、分かってる
ここにいなくても
どこにもいなくても
ちゃんと、いる
自分の中に
立ち上がる
振り返る
ベンチ
空いている場所
でも
もう、空っぽには見えない
そこには確かに
“一緒にいた時間”がある
歩き出す
少しだけ、背筋を伸ばして
前を向いて
その先に、続いていく日々へ
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終わりました。
まひなが1番ムズいかもしれない説が浮上してきました。
ほんと、すみません。
明日、また新しいのを公開しますのでお待ちください。














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。