小児科のラウンドが終わり、循環器外科の方に向かおうとした時、名前を呼ばれて振り返る。
そこには、弦巻先生がいた。
にこやかに話す弦巻先生の後ろで、ピシッと髪型を決め、スーツを身に纏う男性。
思わず固まり、少し目を見開いてしまう。
私の動揺に気づいていない弦巻先生は、男性を紹介した。
……何が、はじめましてだ。
はじめてでもなんでもないのに。
立場的に初対面の振りをしなければならないのは分かってる。
でも、私を見てもなんの動揺もしない、平然としている音羽先輩に少し腹が立つ。
少しは気持ちが楽になったのだろう、少し笑顔が柔らかくなった。
そう言って、その場に音羽先輩と私を残して行ってしまった。
腕時計を見ると、既に昼休憩に突入していた。
しまった……また千晶さんに怒られる。
話したい事がある、と音羽先輩の目は言っている。
私も話したい。
久しぶりに、話したい。
まさか断られると思っていなかったのか、少し目を見開いた。
私は頭を下げて逃げるようにその場を去った。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。