第42話

36.イルミネーション③
1,520
2023/12/13 08:00
❤️side
大西流星
西畑先輩
西畑大吾
ん?
大西流星
メリークリスマスですね
しばらくの間流星を見つめていると、流星は急にそんなことを言い始めた。
西畑大吾
ほんまやね、メリークリスマスや。
大西流星
…僕、勝手に先輩にプレゼント用意したんです
西畑大吾
え…?
鞄から小さな箱を取り出した流星は、静かにそれを俺の前に置いた。
大西流星
ほんまに、勝手に用意しただけやから、気に入らなかったら使わないで大丈夫です
西畑大吾
そんなこと言わんで、大切にする。
これ、今開けてええの?
大西流星
もちろんです
丁寧にラッピングされた箱を開けると、見覚えのあるリップが1本入っていた。思わず流星の方を向いて呟く。
西畑大吾
これ…この前流星が買ってたやつ?
大西流星
うん、色違いですけど。
先輩に似合う色やと思うんです
いつもより落ち着いたように話す流星。似合うと思って用意してくれたことも、流星と色違いなのも嬉しい。
西畑大吾
嬉しい。ほんまにありがとな。
後で塗ってくれる?
大西流星
後で…?今でもええけど。
こてんと首を傾けて不思議そうに言う流星の頭を撫でて俺は続けた。
西畑大吾
実は俺からもプレゼント。はい、これ。
そう言って、静かに流星の前にプレゼントの箱を置く。流星は驚いた顔してて可愛い。
大西流星
え…開けていいですか?
西畑大吾
うん、ええよ。自己満みたいなプレゼントになっちゃったかもしれへんけど…
大西流星
え?これって…お買い物行った時に買ってた香水…?
流星の大きな目が、俺に向けられる。
大西流星
あのときプレゼント用って言って……
西畑大吾
流星へのプレゼント、な。
意味が伝わったらしく、流星の目がうるうるし始めていて、今にもその大きな目から涙がこぼれそうになっている。
大西流星
僕たち、同じタイミングでお互いのプレゼント買ってたってこと?
西畑大吾
ほんまやな、それもお互い秘密にしてたし笑
大西流星
2個買ってたから、先輩用と交換会用かと思ってました
西畑大吾
そう思われると思ってた。
これな、ペアフレグランスってやつやねん。
大西流星
ペアフレグランス…?
西畑大吾
うん、2つは違う香りやねんけど、2つ合わさるとまた別の良さがあるんやって。
大西流星
へぇ…そんな素敵なものがあるんや…
西畑大吾
カップルとか親友とかの間で使うことが多いらしいで。
大西流星
これとペアの香水は誰が持ってるんですか?先輩?
西畑大吾
うん……ごめん、勝手に
これを買ったのは流星への恋心に気付くちょっと前。やましい気持ちは一切無くて、純粋にお揃いの香水ってことに惹かれたけど、よく考えたら好きでもない人からのこんなプレゼントなんて引かれても当然だよな。
大西流星
ううん、先輩が謝らんで。プレゼント用意してくれたことも、先輩とペアなのも、ほんまに嬉しいです。
でも逆に、僕がもらってええの…?
西畑大吾
もちろん。流星のことイメージして香り選んだから。
大西流星
宝物すぎて使えへん…
西畑大吾
そう言ってくれるの嬉しいけど、無くなったらまた新しいのプレゼントするから使ってほしい
大西流星
わかった、じゃあ…今使ってみてもいいですか?
西畑大吾
うん、つけてみて
香水を手首につけて首元を優しく擦る。途端に広がる甘いバニラの香りに吸い寄せられるように、俺は流星の首元に顔を寄せた。
西畑大吾
甘い香り。流星やからかな
大西流星
…先輩は今つけとるの?
西畑大吾
うん、俺のは石鹸みたいな……
そう言い終わるよりも前に流星に腕を引かれて、俺の首元に流星の顔が近づく。一瞬にして、顔が熱くなった。
大西流星
西畑先輩っぽい香り。僕好きやよ
今日はとことん流星にどきどきさせられっぱなしや。
西畑大吾
あ、流星からのプレゼントのリップ塗ってや。
大西流星
うん、ええよ
リップの蓋を開けた流星は、俺の唇に少しリップを乗せて、指で優しく叩いた。流星はリップに集中しとるみたいやけど、俺は流星のことばかり考えてしまう。
西畑大吾
リップって指使うんや。
大西流星
ほわ〜んって感じで可愛くなるんです
西畑大吾
俺可愛くなってる?
大西流星
ふふ、うん、可愛いです
柔らかく笑って言う流星の顔を見てたら、正常じゃいられなくなってくる。

またや…プールのときと同じ感覚を思い出しながら、俺は流星に顔を近づけた。でもあのときとは違って、流星は俺の肩を優しく押し返してくる。
大西流星
……僕、こういうことは付き合った人としたいです
西畑大吾
あ……ごめん
急いで身体を離すけど、流星との距離がひどく遠くなってしまった気がする。

流星は当たり前に俺を受け入れてくれるもんやと思い込んでやりすぎてしまった。
大西流星
先輩が悪いんやないです。
僕が、勇気がでないから…
キスしようとする前に告白していたら、もしかしたら付き合えたんやろうか。でも流星が言う付き合った人っていうのは、そもそも俺やない。

考えれば考えるほど分からなくなって、俺の気持ちを隠すように、帰り道はずっと手をポケットに突っ込んでいた。





1年目のクリスマス編はこちらで終了となります!
クリスマス編は続けて読んでいただきたかったので、お買い物デート編から毎日投稿しておりました☺️
たくさんの♥️やコメント、スタンプ等本当に嬉しかったです!✨️😭✨️

両片想いのもどかしさが存分に伝えられたら良いなと思ってます…🫣

1日あけて金曜日の17:00に続きを投稿いたします!
この辺りから急加速でお話が進むので、ぜひ見届けていただけたらと思います😊

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