私は保健室には行かず、校舎のいちばん端の階段を登っていく。
立ち入り禁止の屋上へと続くドアの鍵が壊れているのを、私は知っていた。
さびついた取っ手をつかみ、色褪せた古くさい鉄扉を押し開ける。
隙間からぶわりと熱気が押し寄せてきた。
直射日光に焼かれた屋上のコンクリートを踏み締めると、ざりっと嫌な音がした。
ざり、ざり、と自分の上履きが立てる音を聞きながら、
貯水タンクの陰に移動し、ごろりと横になる。
強すぎる日差しに包まれた屋上は、たとえ日陰になっていても、吐き気がするほど暑い。
どこにいたって居心地が悪いのは同じだ。
家でも、教室でも、青空の下でさえ、
私の苛立ちはおさまることがない。
でも、誰にも見られる心配のないこの場所が、1番マシだった。
放課後の始まりを知らせるチャイムが鳴るまでそこで
時間をつぶして、グラウンドに部活動生たちが溢れはじめた頃、私はやっと屋上を離れた。
それから、ひと気のなくなった教室にカバンを取りに戻り、逃げるように学校を出た。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。