第12話

𝙽𝙸𝙽𝙴『火事と喧嘩は江戸の華』
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2023/04/19 14:54
ぞろぞろと入ってくる第8に、紅丸は玄関に座り込んだ。
新門紅丸
新門紅丸
急に押しかけてくるとは、どういうつもりだ。
如月空緒桜
如月空緒桜
空緒桜も黙って紅丸の隣に腰を下ろす。ヒナタとヒカゲが2人の後ろに隠れた。
桜備
桜備
新門紅丸大隊長は、面倒な手続きがお嫌いだと聞いて、直接来ることにしたのですが…
新門紅丸
新門紅丸
…(グイッ
紅丸はヒカゲに引っ張られてズレた着物を直した。
新門紅丸
新門紅丸
…勝手に来ちまったことは…まあいい。だが、伝導者の調査だか何だか知らねぇが、俺たちのシマを勝手に荒らされるわけにはいかねぇんだ。
桜備
桜備
伝導者は、人工的に”焔ビト”を作り出している。次はここの町民がターゲットにされる可能性がありますよ。
如月空緒桜
如月空緒桜
それを聞いた空緒桜は訝しげに第8を見た。
如月空緒桜
如月空緒桜
それは…皇国の言っていることですよね。実際にその伝導者たちが人を”焔ビト”にしているところを、私達が見たわけではありません。
紅丸は立ち上がって背を向けた。
ヒカゲ
ヒカゲ
えっ、わわわわっ!
ヒカゲが慌てて飛び退くと紅丸の着物がずり落ちた。気にせずヒカゲは空緒桜の後ろに隠れた。
新門紅丸
新門紅丸
…(グイッ
新門紅丸
新門紅丸
馬鹿正直に信じる気はねぇんだよ。
紅丸は着物を直しながら呟いた。
森羅
森羅
俺は実際に見ました!
すると、1人の少年が口を開いた。
如月空緒桜
如月空緒桜
知りませんよ。
新門紅丸
新門紅丸
皇国の犬が何を見たかなんてこちとら知らねぇんだよ。疑うことを知らねぇ犬っころの話なんざ聞きたくねぇ。
否定するように言うと、少年はムッとしたような顔をした。
森羅
森羅
…疑うだけ疑って何もしない奴には言われたくないね。
如月空緒桜
如月空緒桜
(ピクッ

ビュッ

森羅
森羅
少年が言うとともに、空緒桜の身体が動いた。

ガッ

森羅
森羅
うおっ!
空緒桜は少年の足を引っ掛けて転ばせると、膝を着いた少年の首を両手で固定した。
桜備
桜備
森羅!
森羅
森羅
(速ぇ!)
空緒桜は森羅と呼ばれた少年を睨みつけた。
如月空緒桜
如月空緒桜
口の利き方には気をつけてくださいね。ここは第7の管轄地。太陽神信者が大口を叩くような場所ではありませんよ?

ギリッ

森羅
森羅
ぅぐっ!
空緒桜は手に力を込めた。
新門紅丸
新門紅丸
アオ、やめとけ。
如月空緒桜
如月空緒桜
(パッ
紅丸が一言言うと、空緒桜はすぐに手を離した。
森羅
森羅
ゲホッ…ゴホッゴホッ
茉希
茉希
だ、大丈夫?森羅。
近くの女性が森羅に駆け寄った。空緒桜は紅丸の元へ戻った。
新門紅丸
新門紅丸
すぐに手を出すな。
如月空緒桜
如月空緒桜
若のことを言われてるんです。黙っていられるわけないでしょう?
新門紅丸
新門紅丸
有難いが、ダメなもんはダメだ。
如月空緒桜
如月空緒桜
…若は、お人がよろしすぎると思います。
新門紅丸
新門紅丸
あー、そうだな。
紅丸は、不満そうな空緒桜の頭をくしゃ、と撫でた。
新門紅丸
新門紅丸
…で、お前は何が言いてぇんだ。
それから、咳き込んでいる森羅を見る。
森羅
森羅
ゲホッ…だ、第7の大隊長…あんた最強の消防官なんだろ。強すぎて仲間にするしかねぇって、町の火消しを皇国に認めさせたんだろ。
如月空緒桜
如月空緒桜
空緒桜は顔をしかめて森羅を見る。
森羅
森羅
だったら今度は、俺があんたをぶっ飛ばして認めさせる番だ。
如月空緒桜
如月空緒桜
貴方に出来るわけないじゃないですか。
森羅
森羅
んなっ!
空緒桜の言葉にカチンとくる森羅。紅丸は呆れたような顔をした。
新門紅丸
新門紅丸
…”火事と喧嘩は江戸の華”ってか
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🌌夜空🌌
🌌夜空🌌
ー注意ー
空緒桜目線のようなものなので、森羅を少年と言ったり茉希を女性と表したりしてます

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