…?
焜炉は浅草内を歩きながら、いつもの姿が見えないことに首を傾げた。
お!焜炉さんじゃねぇか!
よお
こんな所でどうしたんですかい?
ああ、紅の姿が見えなくてな…知らねぇか?
紅ちゃんか?んー…あ、そういや、今日は外に出てるって聞いたなぁ。
そうなのか?
それを聞き、すぐに不機嫌そうな紅丸の顔を思い浮かべて焜炉は小さく笑った。
だいぶ前に聞いたからそろそろ帰ってくるんじゃ…何笑ってんスか?
ふっ…いや、少しな。
(紅のことだ…向こうじゃ”太陽神”とかの単語は当たり前に飛び交うだろうし、こりゃ機嫌取りが大変だな)
焜炉はそんなことを考えながら、聞いた町人にお礼を言ってその場を離れた。
…お?
そして村の入口に目を向けると、丁度紅丸の姿が見えた。
おーい、紅。
…あ?
…?
軽く手を上げて紅丸を呼ぶが、少しの違和感に気づいて手を下げる。
…え?
…なんだよ。
…は?いや…え?
今の焜炉には、顔をしかめる紅丸よりもその腕の中にしか目が行かなくなっていた。
…
その腕の中には、幼い少女が大事そうに抱かれていた。
…紅…
…わかってるよ。”似合わねぇ”とか言うんだ──
…ゆ、誘拐…か…?
…は?
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。