五人で話た日から三日目の週明け月曜日、
私達は校長室に呼ばれた。
このタイミングで呼ばれるということは
父親か母親が学校に密告したのだろう。
私達は一ヶ月の自宅謹慎となった。
先に帰らされたのはある意味好都合だった。
家に入り、制服から私服に着替え、
机の引き出しからレターセットを出した。
二人に手紙を書くために。
書き終わった手紙を両隣の扉の隙間に挟んでおいた。
そして、カッターを持って
お風呂場へ向かった。
〘**愛緒生side**〙
校長室に呼ばれ、散々言われたが
別に悪いことをしてないと
俺も竜さんも思っている。
先に帰った幸奈はどうしてるだろうかと考えながら
自宅の前まで来ると扉に
何かが挾間っていて、引き抜くと
《あい君へ》と幸奈の字で書かれていた。
中に入らずにその場で開いた。
《あい君へ、
まずはごめんね。二人は
迷惑をかけられた覚えはないって言ってくれたけど、私のせいで
謹慎になっちゃったんだから結局は迷惑をかけたのと同じだよ……
でもね、三人でいた時間は凄く楽しくて、満たされてた。
それと、これが最初で最後の手紙だから言うね。
私はあい君を愛してました。
本当にありがとう。バイバイ。
幸奈より 》
最初で最後?
まさか‼
階段を駆け降りて管理人室に急いだ。
『鈴原さん、急いで七〇八号室の鍵開けてくれ‼ 』
俺の焦りようを見てただ事じゃないと
察してくれたみたいで二人で七〇八号室に向かった。
鈴原さんに開けてもらい
幸奈の名前を呼びながら中に入った。
そして、お風呂場で発見した……
湯船に浸けていたせいで血が中々止まらない。
俺は咄嗟にタオルかけに掛かっていた
フェイスタオルで幸奈の傷口を縛り、抱き抱えて出た。
「え、幸奈ちゃん!?」
鈴原さんはぐったりした幸奈を見て吃驚している。
『手首を切ってます』
なぁ幸奈、お前のせいじゃないんだよ。
謹慎だとか言ってる場合じゃない。
七〇八号室の鍵を閉め、階段を降りて駐車場に向かい、
幸奈を抱いてる俺の代わりに鈴原さんに
車の鍵とドアを開けてもらった。
病院に着き、幸奈を医者に預けたところで携帯が鳴った。
ディスプレイには“竜さん”の文字。
マンションに着き、幸奈の手紙を見付けたのだろう。
外に出てから電話に出た。
『今何処にいるんですか!?』
焦る竜さんの声。
『杉宮総合病院』
この辺りで一番でかい病院だ。
『分かりました、私もそちらに向かいます』
タクシーで来た竜さんと中に入り、
幸奈を預けた医者が出て来るのを待った。
竜さんは幸奈の手紙を読んでいる。
チラっと見た竜さん宛ての手紙は
愛してる云々のくだりだけを抜いて
他は同じ文書だった。
幸奈、お願いだから助かってくれ。
そして、今度は、文書じゃなく
お前の声で俺が好きだって言って欲しい。
俺もお前を愛してる。
〘**竜成side**〙
謹慎を言い渡されてマンションに着くと 扉に
何かが挾間っていて、引き抜くと
《竜君へ》と幸奈の字で書かれていました。
嫌な予感がし、慌てて愛緒生に電話をかけると
当たってしまったようで、杉宮総合病院にいると言われました。
椅子に座り、幸奈の手紙を開きました。
《竜君へ、
まずはごめんね。二人は
迷惑をかけられた覚えはないって言ってくれたけど、私のせいで
謹慎になっちゃったんだから結局は迷惑をかけたのと同じだよ……
でもね、三人でいた時間は凄く楽しくて、満たされてた。
これが最初で最後の手紙。
本当にありがとう。バイバイ。
竜君、大好きだよ。
幸奈より 》
どんな思いでこれを書いたのでしょうか……
彼女は、私達が学校を辞めなくてい方法をを考えてくれたのでしょうね。
やり方は他にもあったと思いますが……
思い詰めた幸奈は
冷静な判断が出来なかったのでしょうね……
幸奈が診察室に入って随分経ちますね……
私は椅子から立ち、
外に出て幸奈の母親に電話を掛けました。
幸奈、助かって下さい。
私もあなたが大好きですよ。
〘**幸side**〙
私は幸奈達が心配だった。
最初は驚いてあんなことを言ってしまったけれど、
両隣の二人には感謝している。
教師と生徒というのは少し微妙だけれど
私達が居ない間、一緒に居てくれる人がいると
分かった時、嬉しく思った。
私はそう思ったけれど、あの人は違ったみたいで
幸奈が彼らを誘惑したみたいに言っていた。
それについては私は反論した。
幸い、幸奈の恋心に気付いていない様子だったから。
しかし、あの人は学校に匿名で密告してしまった。
そして、最悪の事態が起きてしまった……
それは、青山さんからの電話で知った。
『今、お時間大丈夫でしょうか?』
仕事も一段落してるし大丈夫。
「えぇ」
彼が話した内容に私は
頭を鈍器で殴られたような気持ちになった。
「分かりました、今すぐそちらに向かいます」
仕事なんてしてる場合じゃない。
部下に帰る旨を伝えて駐車場へ急いだ。
幸奈……ごめんね……
「青山さん‼」
私が来るのを待っていてくれたみたいで
病院の入り口に青山さんが立っていた。
『お待ちしていました』
中に入ると花蕾さんが祈るように俯いていた。
「山川さんのご家族の方は?」
医者に言われ、近くに行った。
「私です」
「娘さんは一命をとりとめましたが目を覚まさないんです」
私は分かってしまった……
幸奈が目を覚まさない理由を。
母親だもの……
だから、私は花蕾さんにお願いすることにした。
「花蕾さん、幸奈はあなたを待っているんだと思います。
どうかお願いあの子を助けて下さい」
私じゃ駄目だ。
お伽噺のように、キスで目覚めるなんて言わないけど
彼が近くに行けばきっと目を覚ます。
母親の勘だ。
「分かりました」
彼は幸奈の居る診察室に入って行った。
「青山さん、ありがとうございました」
あの人には連絡しなかった。
幸奈を罵るだけと分かっているもの。
『いえ、幸奈が一命をとりとめてくれて本当によかったです』
そうね……
本当によかった……











編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。