彼の淡々とした言葉が私を容赦なく貫く。
本当のことだから、何も言えなくて俯いてしまう。
私が謝罪を伝えると、乱歩さんは
何故か苦しそうな顔をして私を見詰めていた。
その時、私はハッとした。
私は乱歩さんから
返事をもらうことを考えていなかった。
だって、断られるに決まってる。
聞かなくても判る。
そうやって私は無意識に考えていたらしい。
乱歩さんは落ち着いた調子で、とても
愛おしいものを眺めるような瞳で話を始めた。
私はそれを静かに聞く。
違う。そんなわけない。
あの日のことなら
昨日のことのように鮮明に覚えている。
忘れるわけがない。
それより___
私がそう聞くと、彼は外方を向いてしまう。
だけれど…彼のさらさらとした髪の隙間から、
彼の耳が少し赤くなっているのが見えた。
私はどうしようもなく
幸せな気分に包まれた。
初めてあった日のことなんか、
乱歩さんは知らないと思っていた。
だから彼に聞くのが怖くて、
あの日のことは胸の中に仕舞っていた。
だけれど……
私の目からは自然と涙が流れていた。
悲しいからじゃない。
私は今とっても嬉しくて、堪らなく幸せで……
乱歩さんが優しい声で私の名前を呼んだ。
その一言はまるで、今何処にいるのか判らないような暗闇の中で、手を差し伸べられる様だった。
だけど……
私は猟犬部隊やポートマフィアに追われている。
彼らから逃れる術はない。
もし、ここで乱歩さんの手を取ってしまったら、乱歩さんも巻き込むことになってしまう。
そんなこと、したくない。
私は何度も彼に謝った。
貴方が好き。貴方の手を取りたい。
貴方に好きって言ってもらえて嬉しい。
なのに、現実はそうはいかない。
その残酷な事実が辛くて辛くて仕方がなかった。
彼は何か思い付いたようにそっと口を開く。
私は彼が放ったその一言に驚いて
時が止まったかのように固まってしまった。
次回 最終回













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。