凛は両手を広げて母のウエストを抱きしめた。
母は凛の頭を撫でで、私の正面の椅子に座った。
凛がはしゃいで言い、母は少し眉根を寄せながら紅茶のカップを持ち上げた。
安心して! ただ思春期なだけだから!
なんならあなたもそろそろ更年期だよ!
そう思って母に笑いかけていると、凛が「どうしよう」という困った目で見つめてきた。
姉としてここは助け舟を…
それに、思春期という仕方のない原因で悪口を言われている兄のフォローを…
凛は不機嫌そうに息をついた。
そう、私の母はヒステリック。
近所では「優しい」と評判だが、家に来てみたらヒステリック。
私たちに、いや、私にストレスを撒き散らす張本人。
お前のストレスは私に飛んだ。
だが私のストレスはどうすればいい??
私、多分反抗期ないな。
だって正当防衛だから。
理不尽なのだ。
怒らなくてもいいことにも怒鳴っていくスタイル。
それに私が「それ違うよ」と言ってなぜそう言ったかを問うと、また怒鳴る。
どうしようもない。
そんな最悪な性格に火に油を注ぐのは、環境。
父は毎日遅い。
兄は思春期。
私は今年受験生。
…大丈夫だ、今年耐えれば大丈夫……なのか?
凛がムキになった。
おやおや、こうなったらもう止められない。
どこから湧いてくるの、そんな自信…
母もきっと承諾してくれないでしょうよ…
そう思っていたが、母はクスッと笑って言ったのだ。
…何英語の授業の翻訳みたいな。
にしても、あの年齢の方が絶対生きやすいよね。
小さければ小さいほど、周りから褒められるし。
幼稚園でも私の場合居場所はあった。
友達もいた。
心は真っ白なんだ。
今はもう、ね………
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。