「顔布に、赤い絵の具で
名前を書いて、額に貼り付けるのはどうだ?」
とある夏の朝、長谷部が唐突にそう言った。
「いいんじゃない?」清光は頷いた。
安定はその提案を聞き、両手をキュッと握り、
脇を締めて、ワクワクとしていた。
ようやく、主が自分を認識してくれる日が来た。と。
だが、安定を見ていた清光は、こうも思った。
そもそも、青色を認識出来なかった主が…
安定をどう見るかどうか……
ただ赤い文字が浮いているように見える化け物にでも
見えるのではないか…と。
「じゃあ、顔布に合わせて、
内番の時、赤い服を全員着ればいいんじゃない?」
清光の提案を聞き、一期一振は頷いた。
「そうですな…私も主に認識されませんし…
弟達の中で、まともに認識されているのは
信濃だけ……その提案は良いかもしれませんな。」
兄である一期一振の提案を聞き、
プルプルと涙目で震えながら小さい手を挙げ、
「じ、じゃあ……虎くん達も…
赤く染めないといけなくなる、んでしょうか…」
と、いつも五匹の白い虎を
連れている短刀、五虎退は言った。
すると、その五虎退の頭にポンと手を置き、
「その必要はない。子猫が中庭で寝転んでいた時、
小鳥はすぐに気づいて止めていた。
その時子猫は白い服を着ていたが、
白と黒の判別が出来ていなかったのだな。
小鳥は「こんなに黒い服で……」と言っていた。
きっと、白と黒の判別が出来ていなかったから、
鶴丸と鯰尾。この二振を、
小鳥は間違えやすいのだろう。
鶴丸は白い髪、鯰尾は黒い髪。
しかも二振共に似た声をしているからな。
だが、小鳥は辛うじて白は見える筈だ。
虎を赤に染める必要はない。」
と、五虎退と同じ上杉謙信の刀である
山鳥毛は、五虎退の頭を撫でながら、
安心させるように言った。
五虎退はそれに、「は、はいっ…
ありがとう、ございます…」と、
控えめに返答をした。
そして、部屋の隅でひっそりと
壁に耳を傾け、静かに寝ていた
翡翠色の髪をした青年、にっかり青江を、
彼の昔馴染みである、紅玉の目を持つ、
深窓の薔薇、京極正宗が小突いて起こした。
「おやおや、ぐっすりと眠っていたのに…
君は本当に意地悪さんだね…」
「あら、青江。今はおねんねの時間ではなくてよ?」
と、彼らが言い合っていると、
「ハッハァー!これはこれは!
随分と賑やかな話し合いだな!」
という、至近距離で話されたら耳がキーンと
しそうな声を出し、京極正宗、にっかり青江と共に
京極家の刀として名を馳せた、
道誉一文字が勢い良く襖を開け、部屋に入ってきた。
「道誉のおじさま!?」「…?!」
流石にこれには京極と青江はビックリしたようで、
二人とも道誉の大声に肩を跳ねさせた。
その様を横目で見て、「はぁ…全く…」と、
一文字則宗はため息をつきながら、
持っている扇子を片手で一気に
バラッと音を立て畳み、床に先をツンツンと付けた。
その動きを見て、今度は
「御前、何か?」と、その意図を察したらしい、
日光一文字が則宗の口の所へと耳を傾けた。
則宗が、日光の耳に何かを言うと、
日光は驚いたような顔をしてすぐに
急いで主の部屋へと行ってしまった。
長谷部はその様子を見て、
「どうした?何かあったか?」と聞いたが、
則宗はケタケタと笑い、「さぁの?」と
呑気に返事をした。






![[ 参加型 ] 特例調査報告書](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/8ec1100b736ec059e775707e9091798bf0049566/cover/01KMTH59DE7803JVFK6FVY7CB9_resized_240x340.jpg)





編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。