第23話

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2023/03/19 08:00


転校2日目_




彼は登校するなり暗い顔をしていた


事情を聞くと耳を疑うような話をした





「…俺さ、小さい頃に結婚の約束をした女の子がいて、初恋でさ すんごい好きだったの

でもその子、突然引っ越しちゃって
俺に何も言わずに、

そこから10年以上音信不通

でもずっと忘れられなくて、好きで、今でもその子が夢に出てくるんだ

顔も名前も曖昧だけど何回も夢に出てきて

その度に苦しくなって、

昨日も夢に出てきたんだけど、今日も出てきて、

しかも今日の夢なんて昨日京本とバスケでパス練習したからか、似たような感じでその子とキャチボールしてる夢見たし、」










…俺の、話だ、



そうすぐに分かった



彼がまだ俺のことを好きでいてくれた


俺と同じように、



















…いや、


俺と同じでは無いか、





『…俺さ、小さい頃に結婚の約束をした
"女の子"がいて』






北斗が好きなのは"京本大我"じゃない、


"あおいたいが 昔の俺"だ




自分で言うのもなんだが、
小さい頃の俺は本当に可愛かった


女の子と間違えられるほど



きっと北斗が"あおいちゃん"と呼んでくれていたのは

見た目から女の子だと勘違いして

『あおいたいが』の『あおい』を名前だと思い込んでしまったからだろう


そしてそれは今も、、








現実はもっと残酷だった





俺と北斗は結ばれない運命




改めてそう思い知らされた




俺が北斗の初恋の子だと絶対バレないようにしなければ、


俺の気持ちは絶対に隠さなければ、






そう決心したはいいものの、
心に嘘はつけない




放課後2人きりの勉強会


2人きりの帰り道


距離が近いとドキドキして、


それを何とか隠して、






隠して、






隠して、、





そんな行動とは裏腹に
日に日に北斗に対する『好き』は増していった


そんな日々を過ごしていると、
気づけば転校してから2ヶ月が経過していた








ある日

北斗が思いがけないことを口にした


北斗「…初恋の子の名前、思い出した、かも」



正直焦った

バレてしまうのではないか、
ここで友情すらも終わってしまうのではないか、と






しかし、

その2日後の昼休みにもっと耳を疑うようなことを言い出した


他クラスの可愛らしい女子に呼び出されてから屋上に来た彼はこう言った


北斗「告白してきた子
初恋の相手のあおいちゃんだったんだよ!」














はっ、?






いやいやなんで






俺なのに、






あんな嬉しそうに微笑んで、








「その子、本当に北斗の初恋の子なの?」


気づいたらそう言ってしまっていた



北斗「なんで疑うの?」



「今更じゃない?

入学して1年以上経ってるんだよ?

同じ高校って分かったらもっと早く声かけてるでしょ」





口が、止まらなかった、


ずっと蓋をしていたのに、

想いが溢れていった、




北斗「...京本は喜んでくれないわけ?
俺がやっと初恋の人を見つけたって言うのに!」



「だって!俺、













...いや、やっぱいいや、北斗の好きにして
俺が干渉することじゃないから」






あと少しで自分が初恋の相手だと明かしてしまいそうだった


何とか想いを留まらせた






北斗「...勝手にさせてもらいますよ」



そう言った北斗の顔は今までに見た事がないくらい冷たい顔をしていた


その顔が俺に向けられていると理解した時
心が凍りつく感じがした



徐々に目頭が熱くなってゆくのを感じながら
俺は屋上をあとにした








𝐧𝐞𝐱𝐭…🧸𓈒 𓏸



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