第16話

世界の終わりとシンデレラ
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2021/11/07 08:40
「前から君のことが好きでした。」








恵奈
恵奈
…え?
これは、夢だろうか。
目の前がきらきらして見える。
ぱちぱちと瞬きをしたが、まだ私は公園のベンチに座って、温真くんの方を見ていた。
温真
温真
ごめん、こんなこと言って。
申し訳ないと言わんばかりの表情。
恵奈
恵奈
私は今、めちゃくちゃ嬉しい。
涙いっぱいの目で、これまでに無いほどの笑顔をして見せた。
恵奈
恵奈
私もあなたのことが好きです。
急に涙が止まらなくなり、体の力が抜けていくようだった。
神様、ありがとう。
温真くん、ありがとう。
雪のように降ってきた奇跡が眩しくて、私は目を細めた。
温真
温真
ありがとう。
公園にぽつりと置かれたベンチに座り、2人で笑い合った。
まだ、明日が続かないかなぁ。
温真くんと、おじいちゃん・おばあちゃんになるまで一緒にいたかったなぁ。
自然と涙が溢れて止まらなくなる。
永遠のように感じる日々は永遠ではなくって、いつか終わりが来る。
寂しさと嬉しさの気持ちが絵の具みたいに混ざり合って、複雑な気持ちだった。
残り時間が無くなって来ている。
そんな中、まだ太陽は呑気に私の体を照らしている。

「いこうか_______」

焦ることもなく、私たちはどこか知らない光の中を進んで行った。
体が暖かい空気に押しつぶされているようだ。
紺色のベールがかかったような宇宙に、静かな爆発が起こった。
「さようなら。」
小さな声だが、はっきりとそう、呟いた。
繋いだ手を、ぎゅっと握り締めた瞬間、意識が途切れた。






ある、5月の冬の事だった。
      ~完~

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