第85話

もう、いないの。
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2021/08/19 05:32



橘「おーい菅原たち、どうかしたか?」



前方に進んでいた橘先輩が、そう声をかけてくれるも、私の頭は真っ白で…





国見「…ほんとは、一緒に帰ろうと思って待ってたんだけど。なんか、用事あるっぽいし…今日は帰るわ。」




そう英が呟いて、「明日、来るから」と言い残し、後ろを振り返ってその場を去っていった。





菅原「白布さん、青城のあいつと知り合い?」


あなたのあなた「………」


菅原「……白布さん?」







……ダメだ、ちゃんと英に聞かなきゃ。




あなたのあなた「……橘先輩に、少し遅れて行くって伝えてください。最悪、来なかったら衣装決めてもらっていいので。」



そう言い残すと、私は曲がり角へと消えていった英を追って走った。






菅原「ちょっ…白布さん!?」





菅原先輩の驚いた声色の、呼び止める言葉には聞こえないフリをして。















はあっ、はあっ……






あなたのあなた「…っ英!待って……!」






曲がり角を曲がると、少し先の電柱に寄りかかる英がいて…










国見「…やっぱり来た」




英は身体を起こすと、やっと追いついてゼェハァ…と肩で大きく息を吸う私に、いたずらっぽく笑った。







あなたのあなた「…なに、手のひらで踊らされてたって訳?」



呼吸が整ってきて、頭も回るようになると、ここで英が寄りかかっていたことと、さっきの言葉で自覚する。




国見「正解。あなたのあなたは昔っから単純だよね笑」



あなたのあなた「こっちは気が動転してたのっ!」




ようやく笑い終えた英は、珍しく口角を上げたまま言った。



国見「ちょっと、こっちで話してこ。」


あなたのあなた「…私、早めに切り上げないとなんだけど」



国見「…なら俺は明日でもいいけど。でも、気になったから今、ついてきたんでしょ?」




私は「…意地悪。」と少し睨みつけるように言うも、英はクスリと軽く笑い流した。








……今でさえ、英の手のひらにいる気分…。









不満をもんもんと溜めつつ英の後をついて行くと、少し広めの公園に着いた。




英は自販機の前で「何飲みたい?」と私に声をかけてくれるけど、「自分で買うからいい」と断った。





スクバからお財布を出そうと探していると、曲げた首の、がら空きな部分に冷たい缶が触れる。





あなたのあなた「冷たっ……!」



国見「ほら、これよく飲んでたじゃん」




放られたのは、小学生の頃よく飲んでたジュースで、よく覚えてるな…と思いながら「…ありがとう」と受け取った。










ベンチに座ると、無言の中でプルトップを引く。




お互い何も言わないまま1口ジュースを飲むが、6年の歳月が過ぎても、不思議と気まずさはなかった。





国見「あなたのあなたの母さん、元気にしてる?」



そこから切り込むのが懸命だと判断したんだろう。英はそう聞くと、私の缶ジュースを握る指に力がこもる。





あなたのあなた「……亡くなった。2年前、中2の秋に。」



国見「え。」



英は自分の飲んでいたジュースから視線を上げると、私の顔を凝視した。


その後、英が俯いて「…ごめん、」と弱々しく呟くから、私も「別に英が謝ることじゃないじゃん。」と言って、また1口ジュースを飲んだ。








国見「……なら、今は…?」






私に、どこまで触れていいのか探るみたいに、私の顔色を伺うように、静かに聞いた。










…本当は、心のどこかで分かってた。英に会った瞬間から。




英には、いつかバレるってこと________


























あなたのあなた「お母さんの再婚相手と暮らしてる。」










英の表情から、色が消えた。




私は観念して開き直って顔を上に向けると、空を仰ぎ見た。











あなたのあなた「だから、白布は再婚した父親の姓。…もう、南瀬あなたのあなたはいないの。」















だから… また宮城に戻って来たって、英と会えたって、もう元には戻れないんだ。








…小学生までの関係性にも、元の私にも。





































……………………………!作者より!…………………………






本日3話目の更新…!書き溜めてた分だけどね😅






せっかくハイキューの日なので、特別なこと無しなのもなぁ…と思い立って、今日1日でこの作品5話更新することにしました!











皆さんにとっても、今の展開上、早く続きが見たいと思うので…、あと2話を今日中に更新できるように頑張ります!


















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