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第12話

9. 懐かしい連絡先
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2026/02/28 14:31 更新
渚side





〈nctwish 日本ツアー決定!〉





そんな記事が流れてきたのは、

大学が春休みに入ってからだった。

開催都市には、福岡の文字。

何度も読み返しては自分がそこに行くことを想像して

いてもたってもいられず、颯に電話をかける








『俺、手術するわ、人工内耳』
『もう決めた』









いつかの為にと、手術費用を貯めるために

必死にバイトもしていた。

ずっとしようか悩んでいた。

でも多分、今が一番いい機会だ。





少し驚いた表情をしたあとすぐに納得したように

頷いた颯は、






『いいんじゃない?』





と賛成してくれた。

翌日、病院に行って説明を受ける。

リハビリが必要なことと、

今補聴器を使って聞いている音よりも

綺麗に聞こえるようになるとは

限らないこと。

中には聞こえすぎて辛くなったり、

手術したことを後悔する人もいるらしい。

それでも、どんなにリスクがあっても

あなたの声が聞こえるようになるなら
なんでも良かった。







『受けます。』







気づけばあっという間に

手術の日程と入院開始日が決まり、

一緒に頑張りましょうという医師の言葉に頷いて

いつの間にか病院の外に立っていた。



ずっと悔しかった。素直にあなたの夢を

応援できなかったことが。

やっとあなたの歌声を聞けるようになる。

それが本当に嬉しくて、

はやくはやくと心は先を行くばかり。

一言伝えておこうと、久しぶりに連絡先を開く。




『久しぶり』
『俺さ、手術することにしたから』
『なんかあったらと思って、一応伝えとく』




聞こえるようになったよって伝えたら、
あの子はどんな顔するだろう。
『以上、nctwishでした!ありがとうございました!』





活動最後の音楽番組の収録。

シズニたちの歓声が響き渡って、

自然と笑顔になる。

それと同時に、頭の中は日本ツアーと、福岡公演と、

そして何より渚の事でいっぱいだった。

最近ステージに立つとふと思う。

シズニの歓声が聞こえて、メンバーの声が聞こえて、

自分の声が聞こえて、歌えて。

こんなにもキラキラした空間に立てている

嬉しさと同時に、

私なんかがこんな所にいていいのかと思ってしまう。

渚はどんな世界にいるんだろうとふと考えてしまう。






「聞こえんくせに、っ」





あの日の言葉がずっと体を蝕んでいる。

まだ謝れていない。














sakuya
sakuya
...あなた大丈夫?



.
.
へ?



sakuya
sakuya
いやなんか顔死んでるけど



.
.
えーそう?気のせいだよ
.
.
めっちゃ幸せだもん今



sakuya
sakuya
...そっか、ならいいけど





半分ほんとだけど、半分嘘。







成功すれば許される?

有名になれば忘れられる?

答えは出ない。ただずっと、あの日の後悔が

胸の奥をきゅっとしめる。






--------あなた 사랑해ーー!!!!!
--------네 목소리가 제일 좋아ーー!!!






シズニが伝えてくれる。

みんながnctwishでいてくれてありがとうと

毎日のように暖かい言葉をかけてくれる。




.
.
ありがとう!



でも、ほんとは。




sion
sion
この8人で活動できてほんと幸せ
sion
sion
これからもずっと一緒にいよう




ほんとは






私はこんなに愛を受けていい人間じゃない。

だって人の世界を踏みにじる事を

言ってしまうような人間だから。

それなのに、その人が見れない世界に

私が居ていいわけが無いから。
収録後、控え室に戻ると

1件のメッセージが来ていた。

相手の名前を確認して、思わず息が止まる。








____________なぎさ。








震える手で開くと、







『久しぶり』
『俺、手術することにしたから』
『なんかあったらと思って、一応伝えとく』







.
.
え、




私のせいだ。

私が聞こえないことを罵ったから。

『何かあったら』って、

もし上手くいかなかったりしたら?

私の声を初めて聞いて、
やっぱり手術しなきゃ良かったって後悔したら?



手術のリスクも、最悪の可能性も、

自分の声を聞かれるのも、

全部が怖い。





悪い考えがどんどん頭の中を埋めていって

吐き気がしてくる。




そんな考えと裏腹に、

顔を上げると楽しそうに笑う7人。

やっぱり私はここにいちゃいけないんだ。



.
.
っごめん、ちょっと外出てくる



riku
riku
えあなた?






廊下にとび出て屋上まで走る。

溢れてくる涙は止められそうにない。

りくに呼び止められた気がしたけど
振り向けなかった。

今メンバーの顔を見れば、

あの純粋で真っ直ぐな瞳を見れば

自分の醜さを痛感する気がして怖かった。






.
.
っっは、泣





それなのになんで。






riku
riku
........あなた、






追いかけてくれるのかな。





ほまに長すぎてごめんなさい、土下座案件

あとみなさん誰ペンですか!

良ければ教えてください...

わたしはりょうちゃんです♡

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